展示

過去の展覧会の紹介

この展覧会はすでに終了しています。会期は前年度以前の日付です。

企画展 尾張氏☆志段味古墳群をときあかす

志段味展 志段味古墳群をときあかす

主催:名古屋市博物館 協力 : 京都大学総合博物館
会期:平成24年4月28日(土)~6月10日(日)
閉館時間:午前9時30分~午後5時(展示室への入室は午後4時30分まで)
休館日:5/1(火)・5/7(月)・5/14(月)・5/21(月)・5/22(火)・5/28(月)・6/4(月)

観覧料

単独券 常設展との共通券
一般 300円 400円
高大生 200円 300円
小中生 無料 -
市内在住の65歳以上 100円 200円(敬老手帳をご提示ください)

・30名以上の団体の場合はお1人につき50円割引となります。
・名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷをご利用の方は50円割引となります。
・身体等に障害がある方は手帳の提示により、本人と介護者2名まで無料になります。 ・各種割引は重複してご利用いただけません。

志段味(しだみ)古墳群

名古屋市守山区上志段味に展開する『志段味古墳群』では、ここ7年間あまりの発掘調査によって、白鳥塚(しらとりづか)古墳の墳丘形態が大和王権の大王墓と同じであることや、中社(なかやしろ)古墳・南社(みなみやしろ)古墳の古式の畿内系円筒埴輪、西大久手古墳で出土した東日本最古級の巫女(みこ)形埴輪・馬形埴輪など、重要な発見が相次いでいます。

それらの成果からは時代の最新情勢に素早く対応する先進性と、近畿の大和王権との強い結びつきがうかがえ、『日本書紀』や『古事記』に尾張を代表する豪族として登場する、〝尾張氏(おわりうじ)〟とイメージが重なります。

本展では、この志段味古墳群に属する古墳とその出土品を中心に、尾張を支配した古墳時代の豪族の動向を追っていきます。また尾張の古墳時代の最盛期である5~6世紀に発展をもたらした、幅広い地域間交流のようすについてもご紹介します。古墳とそれらをとりまく古代尾張の時代背景を通じて、古代東海の大豪族“尾張氏”のイメージを浮かび上がらせていきます。

《プロローグ  志段味古墳群と尾張の古代史》

名古屋市守山区の上志段味一帯は、東海地方有数の古墳が集中する地域です。それらを総称して〝志段味古墳群〟と呼んでいます。志段味古墳群の東端にそびえる名古屋市域の最高峰・東谷山(とうごくさん)では、その山頂に古代の尾張を統治した豪族「尾張氏」の祖先を祀る尾張戸(おわりべ)神社が座し、さらに尾張を代表する多くの古墳が山頂・山麓に分布しています。一体何が、この地域にこれほどの特殊な歴史の足跡を残させたのでしょうか。

プロローグでは、第Ⅰ章以降の展示から古代史のイメージをふくらませるために、志段味古墳群とはどのような古墳群か、尾張の古墳時代の変遷のどこに位置づけられるのか、そして「尾張氏」という豪族は何者か、といった時代背景と予備知識を、主に解説パネルを中心としてご紹介します。

志段味古墳群の分布図

志段味古墳群の分布図

《Ⅰ はじまりの王》

尾張南部に古墳時代の本格的な到来を告げたのは、志段味古墳群で最も古いと考えられる白鳥塚古墳でした。白鳥塚古墳は、4世紀半ば頃に尾張で最初に登場した墳丘長100mを超える大前方後円墳で、尾張の最初の王の古墳であるといえます。

国史跡 白鳥塚古墳

国史跡 白鳥塚古墳

白鳥塚古墳の墳丘に使われた石英

白鳥塚古墳の墳丘に使われた石英

白鳥塚古墳は、古墳の平面形や白色の石英を葺石(ふきいし)に用いる特徴が大和王権の大王墓と共通します。さらに続いて東谷山の山頂に造られた中社古墳・南社古墳でも、大和王権の大型古墳のものと酷似する円筒埴輪が用いられました。

大和王権の前期前方後円墳の特徴が志段味古墳群に色濃くもたらされたことは、尾張の古墳時代が、大和王権との密接な関係を背景にして始まったことを意味します。

中社古墳で発見された円筒埴輪

中社古墳で発見された円筒埴輪
(名古屋市見晴台考古資料館提供)

海岸部の古墳・兜山古墳(東海市)の出土品

海岸部の古墳・兜山古墳(東海市)の出土品
(左手前の石釧は伝・大高古墳出土)(当館蔵)

白鳥塚古墳の登場と相前後して、畿内系の円筒埴輪や三角縁神獣鏡など大和王権との関係を示す品物をもつ中小規模の古墳が、庄内川流域および尾張の海岸部に現れました。

第Ⅰ章では、発掘調査の成果と考古資料から、尾張南部の最初の王が4世紀の志段味古墳群に現れ、さらに中小の首長層が庄内川および海岸部に展開したようすをたどります。

《Ⅱ 帆立貝式古墳の武人と畿内・東アジア》

5世紀半ば頃を境として、尾張では日本列島内外からさまざまな新しい品物や文化が入ってくるとともに、古墳が一部の地域に集中して築造されるようになります。そのようすを特徴づけるのが、志段味大塚古墳をはじめとする志段味古墳群の「帆立貝式古墳」です。

それらの帆立貝式古墳には、大和王権の新しい埴輪や祭祀、中国・朝鮮半島に由来する最新式の武装などがみられます。そのため当時の最先端の品物や文化を尾張にもたらす動きを先導したのは、帆立貝式古墳に眠る武人的な性格の首長たちだったと考えられます。

向山(むかいやま)1号墳の副葬品(福井県若狭町教育委員会蔵)

向山(むかいやま)1号墳の副葬品(福井県若狭町教育委員会蔵)

愛知県指定文化財
 伝・岡崎市(経ヶ峰(きょうがみね)1号墳か)出土品

愛知県指定文化財
伝・岡崎市(経ヶ峰(きょうがみね)1号墳か)出土品(当館蔵)

第Ⅱ章では、志段味古墳群を中心とした帆立貝式古墳に眠る武人首長の姿を描き出すとともに、「武装」と「新たな焼き物と窯業技術」に注目して、5世紀の尾張における大和王権との関係や地域間交流・対外交流のようすを紹介します。

鶏形埴輪

西大久手古墳(守山区上志段味)出土 鶏形埴輪
(名古屋市見晴台考古資料館蔵)

伊勢山中学校遺跡(中区正木)出土の外来系の品々

伊勢山中学校遺跡(中区正木)出土の外来系の品々

《Ⅲ 濃尾の王、尾張氏》

6世紀前半になると、志段味古墳群では最後の帆立貝式古墳である勝手塚(かってづか)古墳と、2~3基程度の小規模な円墳・方墳を造った後、古墳築造を一時停止します。

勝手塚古墳(守山区上志段味)出土 埴輪

勝手塚古墳(守山区上志段味)出土 埴輪 (名古屋市見晴台考古資料館蔵)

羽根古墳(守山区上志段味)出土 七鈴鏡
(個人蔵・当館受託)

羽根古墳(守山区上志段味)出土 七鈴鏡 (個人蔵・当館受託)

ほぼ同じ頃、名古屋の熱田に墳丘長約150mの巨大前方後円墳である断夫山(だんぷさん)古墳が築造されました。断夫山古墳を頂点として、尾張全域を従えるかのように、各地域の古墳をいくつかのランクに分けて位置づける階層が確立されました。この強大な勢力は、断夫山古墳に続いて名古屋に大須二子山(おおすふたごやま)古墳・白鳥古墳まで3代の大型古墳を築造し、影響力を美濃にまで及ぼしました。

断夫山古墳(熱田区旗屋)出土 大型円筒埴輪
(名古屋市見晴台考古資料館蔵)

断夫山古墳(熱田区旗屋)出土 大型円筒埴輪 (名古屋市見晴台考古資料館蔵)

名古屋市指定文化財 大須二子山古墳(中区門前町)出土 副葬品
(南山大学人類学博物館・当館蔵)

名古屋市指定文化財 大須二子山古墳(中区門前町)出土 副葬品 (南山大学人類学博物館・当館蔵)

第Ⅲ章では、古墳から出土した副葬品や埴輪によって、こうした濃尾平野全体に勢力を拡大した強力な王の出現を浮かび上がらせ、そこに東海地方最大の古代豪族「尾張氏」の登場を見出します。

《Ⅳ 尾張氏の祖先系譜と古墳》

6世紀半ばから7世紀後半にかけて、尾張の各地域間の関係も変化し、それまでの階層的な関係はみられなくなり、ほぼ同等な各地域がゆるやかに結び付くようになります。そのためこの時代には大規模な古墳は造られなくなり、横穴式石室をもった小古墳が大小の集合墓地を形成します。

東谷山3号墳(守山区上志段味)出土品

東谷山3号墳(守山区上志段味)出土品 (当館蔵)

東谷山12号墳(守山区上志段味)出土品

東谷山12号墳(守山区上志段味)出土品 (当館蔵)

なかでも志段味の東谷山の西麓には、総数約50基にものぼる尾張最大の古墳群が展開します。ここはかつて4世紀に最初の王の墓である白鳥塚古墳が造られた地域です。東谷山西麓に小古墳を営んだ人々は、自分たちのかつての祖先の墓と見なした古墳の周囲に、自らの墓域を設けたのです。

東谷山の山頂に尾張氏の祖先を祭神とする延喜式内社・尾張戸神社が祀られていることは、実際に血筋がつながっているがどうかとは関係なく、人々が「尾張氏」に連なる一員という意識をもっていたことの表れと考えられます。

第Ⅳ章では、こうした古墳と神社や古代寺院の関係をとおして、断夫山古墳や熱田神宮などが位置する熱田とならんで、志段味古墳群が「尾張氏」を名乗る人々にとって信仰的なよりどころだったことを見ていきます。

《エピローグ 志段味古墳群のいまと将来》

これまでの志段味古墳群の発掘調査のようすや、現在名古屋市教育委員会が進めている、志段味古墳群の今後の保存と整備・活用のための構想や公開事業などについて、ご紹介します。

「歴史の里」基本構想より
志段味大塚古墳・大久手古墳群の整備イメージ

「歴史の里」基本構想より 志段味大塚古墳・大久手古墳群の整備イメージ

関連事業

◎講演関係(参加方法:当日先着順)

◆記念講演会:平成24年4月29日(日) 14時~(1時間30分程度)

  受付:13時より整理券配布、13時30分開場。(先着220名、聴講無料)
  会場:博物館講堂(入口は1階にあります)
  講師:高橋克壽(たかはしかつひさ)氏(花園大学文学部教授)
  演題:「志段味古墳群の登場と大和王権の東国支配」

◆展示説明会:平成24年5月12日(土) 14時~(1時間30分程度)

  受付:13時30分開場。(先着100名、聴講無料)
  会場:博物館1階 展示説明室
  講師:当館学芸員 藤井康隆(ふじいやすたか)

◆シンポジウム:平成24年5月19日(土)13時~(16時30分頃終了予定)

  受付:12時より整理券配布、12時30分開場。(先着220名、聴講無料)
  会場:博物館講堂(入口は1階にあります)
  テーマ:『志段味大塚古墳と五世紀の倭国』
  講師:阪口英毅(さかぐちひでき)氏(京都大学大学院文学研究科助教)
     山田俊輔(やまだしゅんすけ)氏(東京国立博物館研究員)
     ほか、当館学芸員

◎体験関係(参加方法:事前申し込みが必要です)

◆子ども向け体験講座:「ペーパークラフト 古墳時代のかぶとをつくろう」

  期  日:平成24年5月4日(金・祝)・5日(土・祝)
  時  間:10時~(2時間程度) 午前9時30分開場
  参 加 費:一人500円
  対  象:小学校4年生~中学校3年生
  定  員:各日40名 (事前申し込みが必要)
▲募集は終了しました。

◆学芸員と志段味古墳群を歩こう

  期  日:平成24年6月2日(土) 10時~(正午ごろ解散予定)
  参 加 費:無料です。
  定  員:80名 (事前申し込みが必要)
▲募集は終了しました。

同時開催展覧会のご案内

◆見晴台考古資料館主催の関連事業

春季ロビー展
『「尾張氏」をささえた産業-古墳時代の鉄・塩・須恵器を探る-』

会期:平成24年4月24日(火)~6月10日(日)
  交通:地下鉄桜通線「鶴里」駅から徒歩約15分
     または名鉄本線「本笠寺」駅から徒歩約8分
  問い合わせ:見晴台考古資料館 電話(052)823-3200
  住所:名古屋市南区見晴町47(笠寺公園内)