過去の展覧会の紹介

この展覧会はすでに終了しています。会期は前年度以前の日付です。

特別展 新たな国民のたから
-文化庁購入文化財展-

会期:平成21年6月20日(土)-7月20日(月・祝)
休館日:月曜日(ただし7月20日〔祝〕は開館)、および 6月23日(火) 閉館時間:午前9時30分~午後5時00分(入場は午後4時30分まで)
会場:名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1 名古屋市博物館 1階特別展示室
主催:文化庁・名古屋市博物館
後援:愛知・岐阜・三重各県教育委員会

観覧料

一般 300円
高大生 200円
小中生 無料

・名古屋市在住の65歳以上の方は100円(要敬老手帳など)
・20名以上の団体および名古屋市交通局発行のユリカ・一日乗車券・ドニチエコきっぷでご来場の方は、一般・高大生50円引
・身体等に障がいのある方で手帳をお持ちの方(介護者も2名まで)は、観覧料無料
・2階常設展示室もご覧いただけます

「たから」といっても、ここでご紹介するのは、金の延べ棒や、大きなダイヤモンドといったものではありません。日本の美術工芸史における文化財のことです。  文化庁では、重要文化財の指定など、文化財の保存と活用に関する様々な活動を行っています。そのなかに、貴重な文化財が散逸したり、海外に流失しないよう、国が優先的に購入できる制度があります。
 今回の展覧会は、文化庁がその制度により近年収集した文化財のうち、絵画や書跡、陶磁器、仏像など様々な分野から選び出した重要文化財5件を含む19件の美術工芸品をご紹介するものです。
 このような、まとまった形で文化庁購入品をご紹介するのは、中部地方では初めてのこと。またこれまでは全て国立博物館での展示であり、国立以外の博物館としては名古屋市博物館が全国に先駆けての開催となります。
 この夏は、名古屋市博物館の展示室に、名品が一堂に会す贅沢な空間が出現します。  当たり前のことですが、国のたからは、私たち国民の財産ということになります。  今回の展覧会は、名品に触れ、日本美術のすばらしさを知るとともに、文化財を守り、次代に伝えていくことの大切さを考える良い機会となるのではないでしょうか。
 さらに本展では、文化財への理解をより深めていただこうと、ただいまクイズ形式のワークシートを制作中。ワークシートを使った展示説明会(小中学生対象)も行います。どんなクイズがでてくるか、お楽しみに!

展示構成

■描かれた美

重要文化財1件、重要美術品1件を含む絵画作品の名品6件を展示します。
「並笛図屏風」(へいてきずびょうぶ)は、中国、唐時代の宮廷を描いています。画面中央あたりには、玄宗皇帝と、絶世の美女として知られる、かの楊貴妃(ようきひ)が、2人ならんで仲むつまじく笛を演奏している様子が見られます。
 桃山時代には、中国の宮廷風俗を題材にした作品が好まれ、数多く制作されたようです。現在でもいくつか作品が残りますが、そのなかでもこの屏風は天正期(1573-92)頃の制作と見られる古い作例。桃山美術の巨匠狩野永徳の弟である宗秀(そうしゅう)による作品と考えられています。
 背景の金地に衣裳の鮮やかな色彩が映え、全体にエキゾチックな情趣を漂わせる、大変華やかな屏風です。

並笛図屏風 桃山時代 文化庁蔵

並笛図屏風 桃山時代 文化庁蔵

「酒飯論図絵巻」(しゅはんろんずえまき)からは、人々の活き活きとした暮らしぶりが伝わってきます。描かれているのは、酒を好む武士の造酒正糟屋朝臣長持(みきのかみかすやのあそんながもち)と、飯を好む僧侶の飯室律師好飯(いいむろのりっしこうはん)とがその効用をめぐって論争をし、結局は、適度に両方を楽しむ貴族の中左衛門太夫中原仲成(ちゅうざえもんたゆうなかはらのなかなり)が勝つという内容。その上で、仏教における宗派の優劣をも説くという、室町時代に成立した御伽草子です。
 いくつか同様の絵巻はありますが、そのほとんどが、江戸時代に制作されたものと見られるなかで、本作は室町時代まで遡ることのできる古い作例です。
 宴会の様子(酔いつぶれた男性の姿も…)や、魚、鳥をさばく台所風景など、当時の風俗資料としても楽しんでいただけることでしょう(会期中に場面替えを行います)。
 その他、『平家物語』の一場面を描いた「大原御幸図屏風」、江戸時代の画家、長沢芦雪(ながさわろせつ)の「宮島八景図」(重要文化財)などが出品されます。

酒飯論図絵巻 室町時代 文化庁蔵

酒飯論図絵巻 室町時代 文化庁蔵

■書物の華

重要文化財2件を含む書跡5件を展示。
 このコーナーでは、国宝『三十六人家集』から分割された「石山切」(いしやまぎれ)が含まれる「『古筆手鑑 かりがね帖』(重要文化財、会期中場面替を行います)など、「古筆」(こひつ)と呼ばれる、平安時代から鎌倉時代の名筆家による優美な筆跡を目の当たりすることができます。

■工芸の粋

中部地方に関わりの深いものを中心に重要文化財1件を含む5件を選んでいます。
 「蘆屋浜松図真形釜」(あしやはままつずしんなりがま)(重要文化財)は、茶の湯で使用する釜で、かつて名古屋の松坂屋創業者、伊藤家に伝来した逸品。このたび、名古屋に里帰りします。
 また美濃焼を代表する志野や織部の名品もご紹介いたします。

重要文化財 蘆屋浜松図真形釜 鎌倉~室町時代 文化庁蔵

重要文化財 蘆屋浜松図真形釜 鎌倉~室町時代 文化庁蔵

■彫刻の優

重要文化財1件を含む2件の仏像を展示します。
 「木造阿弥陀如来坐像」(重要文化財)は、像内に約860年前の久安3年(1147)に書かれた銘があり、平安時代後期特有のおだやかな作風をいまに伝えてくれます。

重要文化財 木造阿弥陀如来坐像 平安時代 文化庁蔵

重要文化財 木造阿弥陀如来坐像 平安時代 文化庁蔵

■「名古屋のたから」も同時公開!

特別展「新たな国民のたから 文化庁購入文化財展」にあわせ、名古屋市博物館が所蔵、またお預かりしている名品をおひろめいたします。

重要文化財 秋草鶉図屏風(部分) 江戸時代初期 名古屋市博物館蔵

重要文化財 秋草鶉図屏風(部分) 江戸時代初期 名古屋市博物館蔵

江戸時代初期に制作された優品「秋草鶉図屏風」(あきくさうずらずびょうぶ)(重要文化財)などの絵画作品に加え、書跡典籍からは『三宝絵』(重要文化財)、「貫之集下 断簡 石山切」(個人蔵)、工芸分野からは、「黒楽茶碗 銘時雨」(重要文化財)、「太刀 銘 行平作」(重要文化財)、「仁王胴具足」など、重要文化財9件を含む12件を展示いたします。
 それぞれ単独での展示はありましたが、まとめてご紹介するのは初の機会となります。

貫之集下 断簡 石山切 平安時代 個人蔵

貫之集下 断簡 石山切 平安時代 個人蔵

これら、おたからは、それぞれの時代の要請によって産みだされてきました。そして現在の私たちの暮らしは、その時代の延長線上にあります。
 文化財からは先人たちが創りあげた生活様式や美意識をうかがうことができます。そこから私たちが学ぶことも数多くあるでしょう。
 ぜひ過ぎ去りし時代に思いをはせつつ、「私たちのたから」をご鑑賞ください。

関連事業

■「親子でみる・しる・まもる 国民のたから」

小中学生の親子(保護者)を対象にした、学芸員による展示説明会。
ワークシートを手に展示と博物館施設を見学します。
6月27日(土) 午前10時から11時30分 (午前9時40分受付開始)
参加費:小中学生無料(保護者は展示観覧券必要)
定員:先着80名 場所:1階展示説明室

■歴史体験セミナー「和風デコレーションはがきをつくろう」

ぼかし染めなど、様々な技法で美しく飾った、オリジナルはがきを作ります。
7月4日(土)・5日(日) 各日午前10時30分から12時(午前10時受付開始)
参加費:300円 定員:50名(各日先着順) 場所:1階展示説明室

■展示説明会「おたからのハナシ」

当館学芸員が展示品の見所をわかりやすく解説します。
7月11日(土) 午後2時から3時(午後1時30分開場)
聴講無料 定員:先着100名 場所:1階展示説明室