過去の展覧会の紹介

この展覧会はすでに終了しています。会期は前年度以前の日付です。

特別展 初公開 松坂屋京都染織参考館の名品
小袖 江戸のオートクチュール

初公開 松坂屋京都染織さん交換の名品 小袖 江戸のオートクチュール

平成20年4月26日(土)~6月8日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合はその直後の平日)、第4火曜日(祝日を除く)

*会期中の休館日
4/28(月) 5/7(水) 5/12(月) 5/19(月) 5/26(月) 5/27(火) 6/2(月)

開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)

このたび名古屋市博物館では、江戸時代に上層階級の女性が身にまとったきものを盛大に展観いたします。「小袖」は耳慣れない言葉ですが、袖口が小さいきものの意です。袂の長い振袖も、腕が出る部分が小さければ小袖です。江戸時代の小袖は、狭義には絹製で袷仕立てにした中に、薄く綿を入れたものを言います。広義には袖口が小さければ、上布(高級な麻)も木綿でも小袖ですので、展示ではそれらを含めて、様々な小袖を紹介いたします。

小袖はすでに出来上がっているものを買うというものではありませんでした。白生地を何色に染めるか、どのような模様にするか、刺繍を入れるとすればどの部分に何色でなどなど、すべて注文主の意向を受けて作られたのです。このように着る人の容姿や趣味に合わせて作られた小袖は高級品であり、まさにオートクチュール(高級注文服)であったのです。

今回展示する松坂屋京都染織参考館の所蔵の小袖は、松坂屋が、過去の優れた染織品の模様を新作の呉服作りに生かすべく収集したものです。松坂屋コレクションは文化財としての価値が極めて高いものですが、今までにまとまった形で公開されたことはなく、今回が本邦初公開となります。  展示構成にそって、内容をご紹介しましょう。

第一章 小袖もよう アートをまとう

小袖の多彩な模様を紹介します。小袖の模様で最も多いのは、草花や樹木の模様です。しかし、これらの模様は単に美しいというだけではなく、様々な意味を有していました。例えば松竹梅は、厳寒の中でも緑の葉を保ち続け、また清楚な花を咲かせる生命力のある樹木として尊ばれていましたし、菊は延命長寿の薬になると伝えられていたため、模様として好まれました。

植物以外の模様でも、檜扇は雅な王朝文化を思い起こさせますし、茶道具は風流なたしなみを暗示します。和歌の文字を散らした模様は、古典文学に対する高い教養を示していると言えましょう。  このように小袖の模様は、身にまとう人をより美しく見せるものであると同時に、その人の趣味や教養を語るものでもあったのです。

図1 扇面模様振袖 江戸時代中期

図1 扇面模様振袖 江戸時代中期

図2 流水に菊模様小袖 江戸時代中期

図2 流水に菊模様小袖 江戸時代中期

第二章 装いをめぐるとき 時間・季節・機会

小袖は季節や着る機会に応じて、ふさわしい素材、趣向のものが作られました。夏は風通しのよい絽や肌触りのよい上布などが用いられました。  また、晴の場には、それに相応しい華やかさが求められ、婚礼のための衣装はとりわけ豪華でした。

女性が外出するときは、被衣というものを頭から羽織りました。これも小袖と同じような形で、襟も袖もあります。  これら用途にかなった、様々な小袖を紹介します。

第三章 小袖へのまなざし

江戸時代のファッションブックや小袖裂について紹介します。  新しい小袖を作るときに、江戸時代の女性達は「雛形本」を参考にしました。雛形本には、最新流行の模様が掲載されいます。現代女性がファッション誌を楽しむように、江戸時代の女性達も雛形本を楽しんで見ていたのです。

丹精込めて作られた小袖は、小袖としての使命を終えた後も様々に利用されました。仕立てなおして襦袢にしたり、仏壇の打敷にしたり、さらには掛け軸の表装に使われたりしました。

明治になって生活習慣が変わると、多くの人々は江戸時代に美しい小袖があったことを忘れてしまいました。そのような中にあって、洋画家の岡田三郎助(1869―1939)は小袖の美に着目し、自ら収集した小袖をモデルに着せて作品を描きました。これら三郎助収集の小袖の一部は松坂屋京都染織参考館の所蔵品となっており、本展ではそれらの中から、作品に描かれた小袖を、油絵の作品を交えて紹介します。

八橋杜若模様小袖

図3 八橋杜若模様小袖 江戸時代中期

第四章 コレクション探訪

松坂屋京都染織参考館は、小袖の他にも、様々なジャンルの品々を所蔵しています。大名家伝来の能装束や化粧道具などの調度品、加藤清正所用と伝えられる甲冑、小袖姿の女性を描いた屏風等々、多彩な名品の数々をご覧いただきます。

遊楽図屏風

図4 遊楽図屏風(部分) 江戸時代前期

色々糸威片肌脱二枚胴具足

図5 色々糸威片肌脱二枚胴具足 桃山時代~江戸時代前期

図版解説

図1 扇面模様振袖 江戸時代中期

濃い萌葱色の縮緬地に染の技法でおびただしい数の扇面が散らされる。扇面の中には、桐に鳳凰や流水に鶴などの精緻な模様があらわされ、一部に刺繍が加わる。友禅染の優品である。

図2 流水に菊模様小袖 江戸時代中期

紅地部分と波頭、水流は鹿子絞、菊の花弁は刺繍による。鹿子絞をこれほど細かく、密に施すことは至難の業であり、高度な技術と時間を要するため、小袖の中でも最高級品である。

図3 八橋杜若模様小袖 江戸時代中期

模様は『伊勢物語』の一節にある三河国八橋の景。この小袖は岡田三郎助の旧蔵品で、油絵の作品「あやめの衣」のモデルが着用したものである。

図4 遊楽図屏風(部分) 江戸時代前期

江戸時代初期の小袖姿の女性が描かれる。細い帯が腰のあたりで結ばれている。当時の小袖は身幅がたっぷりしていたので、片足を上げても前がはだけていない。

図5 色々糸威片肌脱二枚胴具足 桃山時代~江戸時代前期

加藤清正所用と伝えられる具足。胴部は片肌を脱ぎ、さも乳首と肋骨が見えているように作られている。異様な迫力がある。 (いずれも松坂屋京都染織参考館蔵)

講演会

4月29日(火・祝) 地下1階講堂/午後2時から(1時30分開場) 聴講無料/定員238名(当日先着順)
「松坂屋コレクションでたどる江戸のモード」
丸山伸彦/武蔵大学教授

展示説明会

5月3日(土・祝) 1階展示説明室/午後2時から(1時30分開場)聴講無料/定員100名(当日先着順) 当館学芸員による展示解説。

見て学ぶきものショー

十二単から江戸小袖まで 5月11日(日)・17日(土)・18日(日)
平安時代から江戸時代に至る、日本の衣服の変遷を復元衣裳によってご覧いただきます。
地下1階講堂/午後2時から(1時30分開場)
協力=財団法人 民族衣裳文化普及協会

前期・後期で展示作品が大幅に入れ替わります。

前期=4月26日(土)~5月18日(日)/後期=5月20日(火)~6月8日(日)
観覧料 一般1,200円(1,000円)・高大生800円(600円)・小中生400(200円)

ダブルチケット1,800円(一般前売りのみ、1名2回、または2名1回入場可)

・(  )内は前売・団体(20名以上)料金。前売券は、主要プレイガイド、チケットぴあ、ファミリーマート、サークルKサンクス、ローソン、e+で4月25日まで発売。
・名古屋市交通局発行のユリカ・一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用して来場の方は、当日料金から100円割引。
・身体等に障害のある方で手帳をお持ちの方(介護者も2名まで)は当日料金の半額。手帳をご提示ください。
・着物でご来場の方は当日料金から200円割引。

主催 名古屋市博物館/松坂屋京都染織参考館/日本経済新聞社/中日新聞社
後援 愛知県・岐阜県・三重県各教育委員会/NHK名古屋放送局
協力 財団法人 民族衣裳文化普及協会