過去の展覧会の紹介

この展覧会はすでに終了しています。会期は前年度以前の日付です。

名古屋市博物館開館30周年記念特別展
茶人のまなざし 森川如春庵の世界

森川如春庵画像 バーナード・リーチ筆 名古屋市博物館蔵

森川如春庵画像 バーナード・リーチ筆 名古屋市博物館蔵

平成20年3月1日(土)-4月13日(日)

休館日:月曜日と第4火曜日*会期中の休館日:3月3日(月)、10日(月)、17日(月)、24日(月)、25日(火)、31日(月)、4月7日(月)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)

観覧料

一般 1200円 (1000円)
高大生 800円 (600円)
小中生 400円 (200円)

・(  )内は前売・団体(20名以上)料金。前売券は、主要プレイガイド、チケットぴあ、ファミリーマート、サークルKサンクス、ローソン、e+(イープラス) http://eplus.jp/ で2月29日まで発売。
・名古屋市交通局発行のユリカ・一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用して来場の方は、当日料金から100円割引。
・身体等に障害のある方で手帳をお持ちの方(介護者も2名まで)は当日料金の半額。手帳をご提示ください。

主催:名古屋市博物館/NHK名古屋放送局/NHK中部ブレーンズ/中日新聞社
後援:愛知県・岐阜県・三重県各教育委員会

如春庵森川勘一郎(1887~1980)の名は、三井財閥の総帥鈍翁益田孝(1847~1938)らとともに佐竹本三十六歌仙絵巻の切断に立ち会い、巻頭の「柿本人麿」を引き当てた人物として、あるいは今は切断されてそれぞれ国宝や重要文化財に指定されている紫式部日記絵詞の発見者として知られていますが、後世森川如春庵の名を最も高からしめたものは、本阿弥光悦作の茶碗「時雨」を所持していたことでした。
 昭和42年、43年の二度にわたって名古屋市に寄贈された「時雨」を含む如春庵蒐集品188件211点は、平成18年2月16日に一括して名古屋市博物館に移されました。本展覧会はこの移管を機に、寄贈資料のみならず、昭和の大茶人であり、古美術品蒐集家であった如春庵がかつては所持し、今は他所にあってそれぞれ高い評価を得ている茶道具・美術品を一堂に会し、如春庵蒐集の精華を再現しようとするものです。

第一章 如春庵森川勘一郎の人と交友

如春庵は、益田鈍翁や原三渓(1869~1939)など、当時の日本を代表する財界人であり数寄者であった人々と交流を結び、自らも、彼らに倣って茶会を催し、美術品の蒐集につとめました。また書をよくし、大和絵を描き、さらには作陶にも長じ、鈍翁との合作をはじめ、「時雨」写しなど数々の自作楽茶碗を遺しています。  

益田鈍翁と森川如春庵

如春庵を語るときに、さけて通れないのは鈍翁とのやりとりでしょう。歳は40近くも離れた大御所鈍翁に憧れ、導かれ、時には憎まれ口をたたいた如春庵と、それを「わがまま庵」と呼んでかわいがり、受け入れてきた鈍翁との関係は、当時の新しい茶の湯隆盛を背景に、鈍翁が亡くなる直前まで続きました。

お互い言いたいことを言ってののしりあいながら、茶会にこと寄せて呼び合い、手に入れた道具を自慢しあいました。互いの鼻をへし折ろうとする悪巧みなど、二人の間の逸話は当時の茶会記や、当時使われた茶道具の添え状などに見ることができます。鈍翁関連の遺品を中心に、如春庵とその茶友たちの痛快なエピソードを辿ってみます。

第二章 蒐集よもやまばなし

如春庵は、古美術蒐集家の誰もが望んだように、後世「森川本」と呼ばれるような天下の名品を手中にしたいと願いました。道具はいつまでも一人のもとにとどまるものではなく、いつかは別の数寄者のもとに行き、その目を楽しませるものだと達観していた如春庵は、そうであるが故に、なおさら「森川本」の名を求めたようです。名品の獲得には努力を惜しまなかったとともに、強運にも恵まれていました。こうした如春庵の美術品蒐集にまつわるさまざまな逸話が、今日までおもしろおかしく語り継がれています。

絵巻切断

大正8年(1919)12月20日、「佐竹本三十六歌仙絵巻」全二巻が、益田鈍翁の品川御殿山の屋敷にあった応挙館において、37枚に切断されました。益田鈍翁をはじめ居合わせた40名ほどの財界人、数寄者の中に如春庵も含まれていました。同時に行われたくじ引きで、巻頭の「柿本人麿」を引き当てる幸運にも恵まれ、茶人森川如春庵の名はますます高められていったようです。

また大正9年(1920)には、巻子本「紫式部日記絵詞」一巻を発見しました。昭和7年(1932)に、鈍翁益田孝がこれを購入するにあたって、全五段の内第五段を切断して森川家に残しました。翌年、第三段目が切り離されて掛軸となり、さらに残りの三段分はその翌年に額装となったと伝えられています。かくして、「紫式部日記絵詞」一巻は長く「森川本」の名で呼ばれることとなりました。

国宝 紫式部日記絵詞 鎌倉時代 五島美術館蔵(会期中、場面替えをします)

国宝 紫式部日記絵詞 鎌倉時代 五島美術館蔵(会期中、場面替えをします)

稲之図 伝任月山筆 東山御物 名古屋市博物館蔵

稲之図 伝任月山筆 東山御物 名古屋市博物館蔵

重要美術品 伝仏鬼軍絵巻断簡 鎌倉時代 個人蔵

重要美術品 伝仏鬼軍絵巻断簡 鎌倉時代 個人蔵

夏かげ帖

大正15年(1926)、如春庵をはじめとする当地方の財界人、数寄者たちが集った「敬和会」が中心となって、所蔵する古筆切を一堂に会した展覧会を名古屋市鶴舞公園内で開催しました。当日の様子は今日の展覧会図録に当たる「夏かげ帖」に見ることができます。これを機に当地方の数寄者たちの間で古筆蒐集の気運が高まり、名古屋のお茶は「古筆茶」と呼ばれるまでになりました。

第三章 如春庵と茶の湯

如春庵は、表千家の流れをくむ久田流を学びながら、一方では一流一派にこだわらない、新しい茶の湯を目指したことでも知られています。流派の垣根を超えて時の財界人をはじめ、茶人・数寄者たちなど様々な人士を招いた茶会をたびたび催し、茶席には如春庵が集めた茶道具の数々が披露されました。また如春庵の茶道具蒐集のエピソードには、如春庵の道具に対する執念のようなものの他に、如春庵とその仲間たちが愛して止まなかった「お茶」の楽しさが見え隠れしています。

光悦への憧憬

とうとうおまえ
  いかんすかよ

一周忌の茶会で聞こえたという、如春庵の声。如春庵を知る人々の間で語り継がれる逸話の一つであり、茶碗「時雨」が如春庵の手を離れ名古屋城に移される最後の日の様子を髣髴とさせます。

重要文化財 黒楽茶碗 銘「時雨」 本阿弥光悦作 江戸時代前期 名古屋市博物館蔵

重要文化財 黒楽茶碗 銘「時雨」 本阿弥光悦作 江戸時代前期 名古屋市博物館蔵

「時雨」は、16歳の頃に祖父より買い与えられたものといい、如春庵の美術品蒐集第1号でもあります。如春庵のもとには「時雨」のほかにもう一点光悦の茶碗がありました。赤楽茶碗「乙御前」です。夫婦のように寄り添って如春庵のもとにありましたが、「乙御前」は故あって手元を離れて久しく、今回久々の再会になります。

 「お茶」を知り、愛好しておられる方々には、まさに垂涎の道具を間近に楽しんでいただくことが出来るものと思います。また「お茶」はどうも苦手と敬遠されている方々にも、必ずや会場を一歩出たときには心の隅で叫んでいただけるものと確信しています。

「お茶」はおもしろい…と。

赤楽茶碗 銘「乙御前」 本阿弥光悦作 江戸時代前期 個人蔵

赤楽茶碗 銘「乙御前」 本阿弥光悦作 江戸時代前期 個人蔵

講演会

3月15日(土) 午後2時から 聴講無料 定員238名(要申込) 地下1階講堂

「如春庵が愛した茶碗」

講師:林屋晴三氏(菊池寛実記念 智美術館館長、東京国立博物館名誉館員)
申込方法=往復はがきに氏名・郵便番号・住所・電話番号ならびに「講演会聴講希望」と記入のうえ、名古屋市博物館「茶人のまなざし」係まで。名古屋市電子申請サービス(名古屋市電子申請サービスアドレス https://www.e-shinsei.city.nagoya.jp/)でも申込みできます。1通で2名まで。
受付期間は1月10日~2月15日(必着)。
応募者多数の場合は抽選。

展示説明会

午後2時から 聴講無料 定員238名(当日先着順) 地下1階講堂 

講師:当館学芸員

3月22日(土) 「鈍翁と如春庵」/3月29日(土) 「如春庵と古筆」

呈茶席 会期中(休館日を除く)午前10時~午後3時30分(入室3時まで)

1階特設会場  呈茶券700円(抹茶・特製菓子) *特製菓子は限定数です。

展示替資料一覧

■3月1日(土)~3月16日(日)
 66  重要文化財 佐竹本三十六歌仙切 藤原敏行像
 68  国宝 紫式部日記絵詞 第一段(五島美術館)
 73  重要美術品 十二ヶ月図屏風 右隻

■3月18日(火)~3月30日(日)
 68  国宝 紫式部日記絵詞 第二段(五島美術館)
 73  重要美術品 十二ヶ月図屏風 左隻

■4月1日(火)~4月13日(日)
 56  詠草切「やはたのへたうに…」
 63  重要文化財 佐竹本三十六歌仙切 柿本人麿像(出光美術館)
 68  国宝 紫式部日記絵詞 第四段(五島美術館)
 74  山水図屏風

■前期 3月1日(土)~3月23日(日)
 60  重要文化財 猿図(東京国立博物館
 84  元暦校本万葉集切「隠耳…」
 86  関戸本和漢朗詠集切「水」
 89  筋通切「あき風に…」 古今和歌集断簡
 91  昭和切「はるくれは…」 古今和歌集断簡
 93  重要文化財 明恵消息(細見美術館蔵)
 94  筑後切「宇多院に…」後撰和歌集断簡
 96  古歌色紙「郭公…」(名古屋市博物館)
 123  蓮下絵百人一首和歌巻断簡
 204  織部平鉢(文化庁)

■後期 3月26日(水)~4月13日(日)
 62  重要文化財 狭衣物語断簡(東京国立博物館)
 82  筋切 古今和歌集巻第十一巻頭
 85  香紙切「くらはしの…」麗花集断簡
 87  戊辰切「春興」 和漢朗詠集断簡
 88  石山切「をちへゆき…」 伊勢集断簡
 90  昭和切「あさみとり…」 古今和歌集断簡
 92  重要美術品 和歌懐紙 西園寺実兼筆 (東京国立博物館)
 95  古歌色紙「あきらけき…」(名古屋市博物館)
 95  古歌色紙「ほのほのと…」(名古屋市博物館)
 124  和漢朗詠集切

※名古屋会場では未出品の資料
 69  重要文化財 紫式部日記絵詞 第三段(東京国立博物館)
 70  重要文化財 紫式部日記絵詞 第五段

☆資料名の前の数字は出品番号です。