展示

特別展

特別展「大雅と蕪村―文人画の大成者」

展覧会バナー

 江戸時代の中頃に活躍した池大雅(いけのたいが、1723~1776)と与謝蕪村(よさぶそん、1716~1783)は、日本における文人画の大成者として知られます。その両者が競演したことで名高い国宝『十便十宜図(じゅうべんじゅうぎず)』(明和8年作、川端康成記念会蔵)は、かつて鳴海宿(なるみじゅく、現名古屋市緑区)の豪商・下郷学海(しもざとがっかい、1742~1790)が所蔵していました。本展覧会は、『十便十宜図』誕生から250年を記念して、大雅と蕪村、両者による文人画の名品を展示します。加えて、関連資料や尾張ゆかりの画家の作品をまじえながら、大雅・蕪村と当地の関係を探っていきます。

 文人の理想を表現した文人画は中国に起源がありますが、彼らは中国絵画の思想や主題、技法や様式をどのように受容し、この日本においてどのように発展させたのでしょうか。『十便十宜図』の企画にならい、両者の個性を対比させながら、それぞれの魅力を紹介します。

展覧会情報

展覧会名称

特別展「大雅と蕪村―文人画の大成者」

会期

令和3年12月4日(土曜)~令和4年1月30日(日曜)
※会期中に展示替があります。展示替表を加えた出品リストは追って公開します。

休館日

毎週月曜日(祝休日の場合は翌平日)、第4火曜日、年末年始
※12月6日[月曜]、12月13日[月曜]、12月20日[月曜]、12月27日[月曜]から1月3日[月曜]、1月11日[火曜]、1月17日[月曜]、1月24日[月曜]、1月25日[火曜]

開館時間

9時30分~17時(入場は16時30分まで)

会場

名古屋市博物館 1階 特別展示室・部門展示室

主催

名古屋市博物館 中日新聞社 日本経済新聞社 テレビ愛知

助成

公益財団法人 花王芸術・科学財団

協力

文化財活用センター

文化庁 JAPAN CULTURAL EXPO

令和3年度地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業

観覧料

一般 高大生

小中生

1,400円(1,200円)

900円(700円)

500円(300円)

  • ※カッコ内は前売および20名以上の団体料金。
  • ※高大生・中学生は学生証等を提示してください。
  • ※本展の前売券は令和3年12月3日(金曜)まで、名古屋市博物館、中日新聞販売店、チケットぴあ(Pコード685-802)、ローソンチケット(Lコード42633)、セブンチケット(セブンコード091-163)、イープラス、Boo-Wooチケット等で販売します。
  • ※会期中は当日料金にて名古屋市博物館で販売します。
  • ※名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用してご来館の方は当日料金より100円割引いたします。
  • ※障害のある方は手帳の提示、難病患者の方は受給者証の提示により、本人と介護者2名まで当日料金の半額になります。
  • ※障害者等割引観覧券は名古屋市博物館(会期中のみ)、ローソンチケット(前売のみ)で販売します。
  • ※本展の観覧済み半券を翌日以降にお持ちいただくと、当日料金より200円引いたします。
  • ※各種割引は重複してご利用いただくことはできません。ご了承ください。

展示構成

プロローグ 文人画とは?

 文人画とは、文人(知識人)が自らの学識を活かし余技として描くという中国絵画の理想を尊重したもので、江戸時代の中期以降に普及した絵画ジャンルです。主題は、山水や四君子(梅蘭竹菊)など文人の理想を反映したものが中心でした。ところが、中国の文人画で理想とされる具体的な様式については不明な部分が多く、日本人は色々な資料を参考に手探りで描き始めました。一見すると頭でっかちで技量に乏しいと思われる文人画ですが、こうした背景から、清新な魅力に溢れる新しい絵画動向となり得たのです。ここでは中国の絵画教本である『芥子園画伝(かいしえんがでん)』を窓口に、日本において文人画が受容され、普及していく過程を簡単に紹介します。

第1章 文人画の先駆者―彭城百川

 日本における文人画の先駆者と言うべき人物が、名古屋出身の彭城百川(さかきひゃくせん、1697~1752)です。百川は、松尾芭蕉の系譜に連なる俳人として活動する一方、生業として絵画を手掛け文人画にも挑戦しました。中国で出版された絵画教本や輸入された明清時代の中国絵画を参考に、従来の日本には無い斬新な様式を産み出していきます。俳人であり画家でもある百川の行動や作品は、蕪村に大きな影響を与えました。また、中国絵画をアレンジする方法では、大雅にも示唆を与えたと考えられます。本章では、大雅と蕪村に先立つ先駆者の業績として、百川の文人画作品、また簡略な絵画に俳諧を添えた「俳画(はいが)」と呼ばれる作品を紹介します。

大自然の中を文人が散策する様子を描く。

大自然の中を文人が散策する様子を描く。

【重文】彭城百川「山水図屏風」東京国立博物館 Image:TNM Image Archives
展示期間:令和4年1月18日~1月30日

第2章 早熟の天才絵師―池大雅

 池大雅(いけのたいが、1723~1776)は、京都の銀座役人の子として生まれたと伝わります。幼少期から書画を得意とした大雅は、高位の武士や学者たちから愛され、文人画を志すことになりました。中国の絵画教本などを参考に、文人画のあるべき様式を手探りで追求していきます。愚直に手本のモティーフを使用するため、時に風変わりな造形が目立つ大雅ですが、筆づかいや構成の工夫によって、描かれた風景には現実の風光を思わせる実在感が伴いました。本章では、20代から40代前半頃までに描かれた、山水画を中心とする作品を紹介します。様々な様式を用いて理想的な文人の世界を表現しようとする挑戦の足跡をたどっていきます。

文人が大河に船を浮かべて遊覧する様子を描く。

文人が大河に船を浮かべて遊覧する様子を描く。

【重文】池大雅「前後赤壁図屏風」国(文化庁保管)
展示期間:令和3年12月4日~12月26日

第3章 芭蕉を慕う旅人―与謝蕪村

 与謝蕪村(よさぶそん、1716~1783)は摂津国に生まれたと伝わりますが、詳しい生い立ちは分かっていません。江戸で俳諧を学び、松尾芭蕉にならって諸国をめぐりました。やがて京都に落ち着き、俳諧の宗匠として独立します。俳人として有名な蕪村ですが、生活の基盤は作画活動であり、大雅と同じく新しい絵画動向であった文人画を志向しました。俳諧の愛好者には新興の商人が多く、伝統に縛られない進取の気性に富む人々が多かったからと考えられます。本章では、晩成型の蕪村にとっては画業の前半期にあたる、50代半ば頃までの作品を紹介します。中国絵画の様式を一生懸命学びながら画技を高めていく、蕪村の様子を見ていきます。

中国風の人物が粗末な家を訪問する場面と馬に乗った人物を追いかけて呼び止める場面を描く。

中国風の人物が粗末な家を訪問する場面と馬に乗った人物を追いかけて呼び止める場面を描く。

【重美】与謝蕪村「草廬三顧・蕭何追韓信図屏風」野村美術館
展示期間:令和4年1月4日~1月30日

第4章 『十便十宜図』の誕生

 同時期に活躍した大雅と蕪村が、同じテーマに取り組み、腕を競った作品が『十便十宜図(じゅうべんじゅうぎず)』という2冊の画帖です。中国の文人・李漁(りぎょ、1611~1680)が、自身の別荘を主題にした七言絶句を絵画化したもので、10個の便利さ・快適さを詠んだ「十便」を大雅、季節・天候によって移ろう10個の自然の素晴らしさを詠んだ「十宜」を蕪村が手掛けました。本章では、空前のライバル対決となった『十便十宜図』の展示はもちろん、『十便十宜図』が誕生に至るまでの経緯も考えていきます。注文主と考えられる鳴海宿の豪商・下郷学海(しもざとがっかい、1742~1790)は、なぜこの主題を選び、どうやって京都の画家である両者に発注したのでしょうか。文書資料をまじえながら、下郷家の歴史や下郷家と大雅・蕪村との関係を検討します。

剃髪した人物が座った姿を描く。背後には琵琶を飾る。

「下郷学海肖像」個人
全期間展示


粗末な家の前に田畑が広がる様子を描く。

【国宝】池大雅『十便図』より「課農便図」川端康成記念会
当該場面の展示期間:令和3年12月9日~12月14日
※会期中、『十便図』(全10頁)は適宜頁替します。

小屋の窓から文人が外を眺めやる様子を描く。

【国宝】与謝蕪村『十宜図』より「宜夏図」川端康成記念会
当該場面の展示期間:令和3年12月9日~12月14日
※会期中、『十宜図』(全10頁)は適宜頁替します。

第5章 蕪村の俳画―尾張俳壇と蕪村

 蕪村と当地とのつながりを考えるうえで、下郷家の他に、名古屋の俳人・加藤暁台(かとうきょうたい、1732~1792)の存在は欠かせません。蕪村と暁台は、松尾芭蕉の作風(蕉風)を目指す同志として、地域を越えて協力関係を築きました。俳諧をめぐる意見の相違はありましたが、暁台一門は蕪村の絵画の得意先でもあり、蕪村にとって軽視できない存在だったようです。本章では、蕪村と暁台一門の複雑な関係を、蕪村や暁台の手紙から紹介します。また俳人向けの商品として制作されたと思われる「俳画(はいが)」(簡略な絵画に俳諧を賛として添えたもの)を展示することで、中国風の文人画とは異なった蕪村のユーモアあふれる表現を見ていきます。

蕪村の手紙。脇にはおどけた様子の人物が戯画風に描かれる。

与謝蕪村「井上士朗・加藤暁台宛書簡」部分 名古屋市博物館
全期間展示

第6章 かがやく大雅 ほのめく蕪村―二人が描く理想の世界

 『十便十宜図』が描かれた明和8年(1771)の頃、大雅は既に自身の様式を確立しており、『十便図』において個性を遺憾なく発揮しました。一方、『十宜図』を描いた蕪村は、未だ個人の画風を模索している段階でした。蕪村はその後、俳画の成果を活かして、独自の様式を完成させます。本章では、両者が自身の個性を確立した晩年の時期の名品を展示することで、それぞれの魅力をお伝えします。俗世間とは距離を置き、自然のなかで自由に生きることが文人の理想でしたが、二人はその理想をどのように表現したのでしょうか。光あふれる空想の世界に理想を託した大雅。情感あふれる親しみやすい世界に理想を託した蕪村。両者の個性を比較しながら、それぞれの文人画をお楽しみください。

明るい色彩の点描を駆使して光にあふれた瀟湘八景を描く。

【重文】池大雅「瀟湘勝概図屏風」個人
展示期間:令和4年1月4日~1月30日

雪の夜、窓から明かりが漏れる家並みを描く。

【国宝】与謝蕪村「夜色楼台図」個人
展示期間:令和4年1月18日~1月30日

第7章 尾張の文人画―丹羽嘉言

 丹羽嘉言(にわかげん、1742~1786)は、大雅や蕪村と同時期に活動した名古屋の文人画家です。出自については不明な点も多いですが、裕福な商家に生まれ、成長すると尾張藩の重臣に奉公したようです。引退後は、悠々自適な生活を送りながら、絵画制作を続けました。その作品は、大雅の影響も指摘されますが、基本的には独学によるものと考えられます。嘉言の行動において注目すべき点は、『十便十宜図』の主題である「伊園十便十宜詩」の作者・李漁の著述に影響を受け、隠棲先の居宅を設計しているところです。本章では、丹羽嘉言の作品を紹介するとともに、理想的な文人生活に憧れ、様々な先例に影響を受けながら、名古屋の郊外で隠棲を実践した嘉言の姿を紹介します。

富士山を水彩風のタッチで爽やかに描く。

丹羽嘉言「神洲奇観図」名古屋市博物館
全期間展示

エピローグ 両雄並び立つ―歴史となった大雅と蕪村

 同時代に文人画を志した大雅と蕪村ですが、意外にも交流はほとんどありませんでした。個性や交流圏、作品の受容者も異なる2人ですから、当然と言えば当然かも知れません。そんな両者の貴重な接点が他でもない『十便十宜図』であり、『十便十宜図』があったからこそ、今では両者が並称されるようになったと考えられます。ここでは『十便十宜図』以外の資料から分かる両者の交渉や、後代の画論(絵画に関する評論)から分かる両者の歴史的評価を紹介します。なぜ両者が日本における文人画の大成者と呼ばれるのでしょうか。当時の日本人は、両者の描く作品に何を求め、どのような部分を愛したのでしょうか。最後にこうした問題を考えてみたいと思います。

関連イベント

 イベントはすべて、名古屋市電子申請サービスからお申し込みください。募集開始日はすべて11月2日(火曜)です。先着順にて受付、定員に達し次第終了します。またキャンセル待ちの受付はいたしません。

  • ※障害等により電子申請サービスでの申し込みが難しい場合は、名古屋市博物館までご相談ください。
  • ※取得する個人情報は本事業に関する連絡・集計に使います。また感染症対策のため、保健所等に提供する場合があります。
  • ※手話通訳・要約筆記など特別なサポートを必要とする方は、当日の2週間前までに名古屋市博物館までご相談ください。

記念講演会「大雅 対 蕪村―『十便十宜図』とその後」

日時
12月4日(土曜)13時30分~15時(開場13時)
講師
佐藤康宏氏(東京大学名誉教授)
会場
名古屋市博物館 地下1階 講堂
定員
100名
  • ※聴講は無料ですが、本展の観覧券(観覧済み半券可)が必要です。

展示説明会「尾張名古屋と大雅・蕪村」

日時
12月25日(土曜)13時30分~15時(開場13時)
講師
横尾拓真(当館学芸員)
会場
名古屋市博物館 地下1階 講堂
定員
100名
  • ※聴講は無料です。本展の観覧券は必要ありません。

ワークショップ「『十便十宜図』を模写しよう」

 『十便十宜図』から「灌園便図」「宜冬図」を取り上げ、日本画の画材を使用して模写に挑戦します。制作を通じて、『十便十宜図』の魅力をより深く味わいましょう。

日時
12月19日(日曜)10時~12時、14時~16時の2回
講師
阪野智啓氏(愛知県立芸術大学准教授)
会場
名古屋市博物館 1階 展示説明室
定員
各回30名
  • ※参加は無料ですが、本展の観覧券(観覧済み半券可)が必要です。また小学生以下の方は保護者の同伴が必要です。

関連企画

高精細複製による鑑賞体験

 東京国立博物館が所蔵する(A)池大雅「楼閣山水図屏風」、(B)与謝蕪村「山野行楽図屏風」の高精細複製を露出展示します。ガラスケースなしで、畳に座り屏風を眺めることで、当時の鑑賞の追体験を目指します。

複製展示期間:(A)令和4年1月4日~1月30日

複製展示期間:(B)令和3年12月4日~12月26日

  • ※文化庁「令和3年度地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」(文化財活用センター受託)により鑑賞コンテンツを作成。
  • ※本企画は展覧会の会場内に設置いたします。体験には本展の観覧券が必要となります。

新型コロナウイルス感染拡大防止のためのお願い

 当館では新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を講じております。ご来館の際は「博物館からのご連絡」をご一読のうえ、マスク着用等のご協力をお願いします。

 会場の混雑状況等に応じて入場を制限する場合があります。また、関連イベントを含め展覧会の内容・実施の有無については今後変更する場合があります。最新情報は、名古屋市博物館ウェブサイトまたはSNS(フェイスブックツイッター)にてご確認ください。感染症対策へのご理解・ご協力をお願いします。