特別展 模様を着る
衣服や布を彩る模様。模様は伝統を大切に受け継ぎながら、時の流行に刺激され、新しいものが生み出されてきました。百貨店の松坂屋も昭和のはじめに、国内外問わずさまざまな地域・時代の布地を、小さなハギレにいたるまで集め、新しい呉服デザインを模索してきました。その結果、形成されたコレクションは模様の豊かさ・多様さとともに、模様が作られ変化していく様子を伝えてくれます。
本展覧会では、コレクションにみられる模様を通して意味を探りながら、そこから表われる人々の暮らしや想いにも迫ります。見て楽しいだけでなく、あなたの創造意欲も刺激するテキスタイルデザイン集です。自分だけのとっておきを探す模様の旅に出かけましょう。
NPO法人コンソーシアム有松理事長 中村俶子さんが、展覧会の魅力を語ります。
美しい展示資料が展覧会へと誘います。
松坂屋コレクションは、松坂屋が昭和6年(1931)から呉服デザインのために集めた染織品を中心としたコレクションのこと。その中身は、江戸時代の小袖・能装束やその裂(きれ:ハギレのこと)、外国の布地や裂など種類は豊富で、全部で約5,000件になります。それらは昭和初期の百貨店から発信する流行模様にも活用され、時代を代表する名品を作るための資料として活用されました。その後、コレクションのうち裂を中心とした約3,500件が平成22年度に名古屋市博物館に寄贈となりました。裂の状態は不完全なようですが、一部でも当時の模様やデザインのおもしろさ、技法の多様さを見ることができます。
展覧会名称 |
特別展「模様を着る」 |
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会期 |
令和2年10月10日(土曜)から12月6日(日曜) 開室49日 |
休館日 |
月曜日(祝日の11月23日は開館)と第4火曜日 |
開館時間 |
午前9時30分から午後5時(入場は午後4時30分まで) |
会場 |
名古屋市博物館 1階 特別展示室・部門展示室 |
主催 |
名古屋市博物館 毎日新聞社 日本経済新聞社 テレビ愛知 エフエム愛知 |
一般 | 高大生 |
小中生 |
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1,300円(1,100円) |
900円(700円) |
小中生500円(300円) |
着物でご来場の方は当日料金より100円割引。 |
障害者等割引観覧券(前売・当日共通) |
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一般 | 高大生 | 小中生 |
650円 |
450円 |
小中生250円 |
昭和6年(1931)、百貨店である松坂屋は京都に染織参考室(昭和32年染織参考館へ)を設立させ、新しい着物デザインを模索するために国内外問わずさまざまな染織品を集めました。平成22年(2010)に染織参考館がその役割を終えたことをきっかけに、翌年に一部が名古屋市博物館に寄贈となりました。当館の松坂屋コレクションは、完全な状態の衣装もありますが、衣装の一部だけが残った裂(ハギレ)が多数含まれています。裂は丁寧に額に収めたり、軸装にしたりして保存されており、松坂屋が裂からでも模様の美しさ、おもしろさを探求し、新しい呉服づくりに対して意欲を持って取り組んでいたことが感じられます。
袖口が小さく長着のものを江戸時代まで小袖と呼んでいました。松坂屋コレクションでは小袖やその裂がコレクションの核になっています。女性が着る小袖は時代によって流行がありました。また、身分によっても着る模様に違いが表われていました。模様やデザインを見ていくと、帯の太さや締め方、裾の長さなど着装の違いや新しい技法の登場などにより大きく影響を受けていることがわかります。ここではコレクションの小袖から流行を見ていきましょう。
流水に山吹模様 小袖 江戸時代後期~明治 館蔵(松坂屋コレクション)
小袖を彩る模様は、刺繍や絞り染め、友禅染などの技法で表現されています。技法それぞれが持つ特性を巧みに利用しまたは組み合わせ、小袖は豊かな表現になっているのです。小袖をまじまじと見てみると、驚くほどの細かい技が盛り込まれていることにも気づきます。こうした丹念な手わざからは、小袖を製作した人々の息遣いを感じられます。
飛鶴模様 小袖裂(部分) 江戸時代後期 館蔵(松坂屋コレクション)
小袖の模様で多く描かれているのは、草や樹、花々です。古くから草花は和歌や文学、生活や風習に欠かせないものでした。それによって美しさを愛でるだけではない、自然への感性が培われていったといえるでしょう。ここでは小袖に描かれた模様から垣間見える人々と植物との関わりに寄り添いながら見ていきます。
菊に八橋模様 小袖 江戸時代中期 館蔵(松坂屋コレクション)
菊に八橋模様 小袖(部分) 江戸時代中期 館蔵(松坂屋コレクション)
松竹梅、鶴亀――いまでもおなじみのおめでたい模様。小袖に描かれためでたい模様の数々を、その由来を紐解きながら見ていきます。そこからは、めでたい模様に込められた「長く平穏でありたい」という人々の願いをくみ取ることができます。
松竹梅模様 江戸時代前期~中期 館蔵(松坂屋コレクション)
ここでは源氏物語や伊勢物語、和歌や謡曲など、その一場面を描いた模様を紹介します。その模様の多くは、登場人物ははっきり示さずに、その持ち物や場面の風景などを描いて表現しました。「この模様の意図、わかる?」――持ち主であった女性たちの問いかけに耳を傾けてみましょう。
紅葉に鳥兜模様 袱紗 江戸時代後期 館蔵(松坂屋コレクション)
ここでは模様が自由に変化する様子を見ていきます。名物裂(めいぶつぎれ)のように特定の生地・技法・模様で固有の名前がつけられたもの、染韋(そめかわ)のように固有の利用をされてきたものが、やがてその定義にとらわれず、生地も技法も変わり自由に模様を変化させていきました。ここでは名物裂と染韋について、もともとの成り立ちと模様、そこから派生して自由に形を変える模様を紹介します。
名物裂 笹蔓緞子 大正 館蔵(松坂屋コレクション)
桜に笹蔓模様 裂 近代 館蔵(松坂屋コレクション)
松坂屋コレクションには世界各地で作られた裂や布地もたくさん集められました。そのうち、インドの模様染めである更紗は、世界各地へその土地好みの模様に変えて輸出されていました。さらにそれぞれの土地では独自の技法を使って更紗を作り出すようになりました。
ここでは、海外で生まれて回りまわって日本で親しまれている模様――インド発祥の更紗、カシミール地方のショール、南米のインカ裂を紹介します。
壁龕模様 更紗 18から19世紀 館蔵(松坂屋コレクション)
さまざまな染織品が集まる、松坂屋コレクション。これらは昭和6年から呉服デザインのために集められ始めました。コレクションが集められた背景には、近代に入って呉服屋が百貨店へと変貌し、流行を発信する場となっていたことが関わっています。ここでは百貨店の誕生と流行について松坂屋の歴史とともにたどり、コレクション誕生の歩みを見ていきます。
明治43年に栄町に新築したいとう呉服店 館蔵
模様は、古い時代の形や思いを受け継ぎながら、そのときそのときの新しい形を表わしてきました。それは現在でも私たちの日常で垣間見ることができます。例えば伝統工芸は古くから続く技法を守りながら、いまだからできる表現を模索して発信し続けています。また成人式に女性たちが着る振袖は、江戸時代の小袖に通じる模様も見られますが、いまの時代の好みに合わせて表現しています。展覧会の締めくくりに、名古屋に伝わる伝統工芸や近年の成人式の振袖を楽しみながら、模様が長い年月をかけてたどり着いたいまの様子を見てみましょう。
有松・鳴海絞 縞と丸紋模様浴衣 個人蔵
名古屋友禅 振袖 佳き日 個人蔵
名古屋黒紋付染 黒紋付 個人蔵
11月29日(日曜)
定員50名 要事前申込 聴講無料
※上記イベントで手話通訳・要約筆記等によるサポートをご希望の方は、申込時にご相談ください。
申込方法
名古屋市電子申請サービス(https://www.e-shinsei.city.nagoya.jp)からお申し込みください。
募集期間 10月1日(木曜)から20日(火曜)
本展の展示作品は一部、写真撮影OKです。
その他、作品の保護・安全のため、当館の指示に従ってください。
特別サポーターとして、新感覚和風エンターテイメントユニット、小野小町(おののこまち)のみなさんが展覧会の魅力を発信します。
当館では新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を講じております。ご来館の際は「博物館からのご連絡」をご一読のうえ、マスク着用等のご協力をお願いします。
感染拡大に伴う状況の変化により、会場の混雑状況等に応じて入場を制限する場合があります。また、展覧会・関連イベントの内容・実施の有無等は今後変更される場合があります。あらかじめご了承ください。