展示

特別展・企画展

企画展 書で集う ―競うたのしみ 江戸時代の寄り合い書き―
Calligraphic collaborations in Edo period

展覧会バナー

 学校や職場で、色紙に寄せ書きを書いた記憶はありませんか?きっと絵や文字の配置や贈る言葉を考える楽しみを仲間と分かち合ったことでしょう。

 書の世界では、何人かで力を合わせて制作した作品のことを、「寄り合い書き」といい、作品が生み出される場や動機によって趣が異なっています。

 本展では江戸時代の寄り合い書きをテーマに、画家と公卿らが協同で計画的に作った画帖や、文人たちの交流の中から生み出された書画などを中心に紹介します。また、作品づくりに欠かせない書法技術や制作背景にも注目していきます。

 近年話題の、音楽やダンスの要素が加わった現代の「書道パフォーマンス」の作品も展示します。メンバーが気持ちを一つにして、大きな作品を作りあげる過程も必見です。ぜひご覧ください。

展覧会情報

展覧会名称

企画展「書で集う ―競うたのしみ 江戸時代の寄り合い書き―」

会期

2019年4月27日(土曜)から6月2日(日曜)

4月27日(土曜)から5月6日(月曜)は毎日開館。

休館日

毎週月曜日(祝休日の場合は開館し翌平日休館)、第4火曜日。

5月7日(火曜)・13日(月曜)・20日(月曜)・27日(月曜)・28日(火曜)

会場

名古屋市博物館1階特別展示室

開館時間

9時30分から17時(入場は16時30分まで)

観覧料

一般 高大生

中学生以下

市内在住65歳以上

300(400)円

200(300)円

無料

100(200)円

(敬老手帳等の提示が必要。)

  • ※( )内は常設展との共通料金。
  • ※名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用してご来場の方は当日料金より50円割引。
  • ※障害がある方または難病患者の方は、手帳または受給者証のご提示により、本人と介護者2名まで無料。
  • ※30名以上の団体は割引があります。お問い合わせください。
  • ※各種割引は重複してご利用いただくことはできません。

展示構成

プロローグ 寄り合い書きとは?

 これは、「尚歯会」と呼ばれる、高齢者が長寿を祝って、詩賦や和歌を作る遊宴の様子を描いたものです。作品を見てみると、俳人井上士朗とその門人たちが、楽しげに句を寄せ合っていることがわかります。

 本展覧会ではこのように参加者どうしの関係性や、作られたきっかけを探りながら、作品が出来上がる場や様子を紹介します。

井上士朗とその門人たちが句を寄せ合っている図

横井金谷画・井上士朗他筆「尚歯会図」 江戸時代(館蔵)

Ⅰ 表現の原点

 寄り合い書きに参加者している人の多くは、作品を作る場で文字を美しく、形よく書けるよう、常日頃から修練しています。

 ここでは、王羲之(おうぎし)をはじめとした有名な古典作品を手本として技術を培う「臨書」の重要性を紹介します。また、理論や作法が書かれた「書論」を読み解きながら、作品作りには欠かせない技術と作法を向上させていく過程も合わせてご覧いただきます。

王羲之の拓本

王羲之筆「十七帖」 江戸時代復刻 (名古屋市蓬左文庫蔵)

『米庵墨談』という本が並んでいる写真

市河米庵著『米庵墨談』 江戸時代刊 (名古屋市蓬左文庫蔵)

Ⅱ 競うたのしみ―様々な寄り合い書き―

 寄り合い書きの作品の中でも、制作背景に計画性がうかがえる作品と、人物交流の中で生み出された作品を中心に紹介します。メンバーやシチュエーションごとに異なる作品の趣をお楽しみください。また、トピックごとに筆者が駆使している書法技術や制作背景にもスポットをあて、作品のより深い魅力もお伝えします。

①調度本の世界

 「調度本」と呼ばれる、贈答品や嫁入り道具として作られた装飾性の高い書物を展示します。これらの多くは、平安の貴族文化の流れを組む『源氏物語』や和歌集を中心に構成され、書写はしばしば分担して行われました。

 調度本の分担書写に携わった人物と、彼らが駆使した書法技術を中心に紹介します。

麗な「かな」の作品

藤原定信筆「石山切貫之集下」
平安時代(個人蔵)

②寄り合い書きの妙

 江戸時代、画家と公卿らは協同して歌集や文学作品をモチーフとした巻物や屏風、手鑑(てかがみ)などを制作していました。

 制作された目的や年代に加え、制作メンバーの選定や詞書の草稿などを手掛けるプロデューサーの役割を果たすような人物が活躍していた事例も踏まえながら、制作背景に見える計画性に注目し、紹介します。

伊勢物語の絵色紙と、物語の一部が書で書かれた色紙

「伊勢物語手鑑」(部分) 江戸時代(館蔵)

三十六歌仙の姿の絵と、和歌が書かれている色紙が見開きで貼り込まれている

「三十六歌仙書画色紙帖」(部分) 江戸時代(館蔵)

③即興セッション―尾張文人の交流―

 尾張の文人たちは、俳諧などの文芸を通じて、身分や職業をこえて交流していました。

 彼らは句会などを通じて親交を深め、時には1枚の紙に句や絵を寄せ合っています。

 尾張文人たちの伝統書法にとらわれない独特の表現を紹介します。

ミミズクの絵と句が書かれている

内藤東甫画・横井也有筆「二筆すさび」(部分) 江戸時代(館蔵)

④祝賀の競演―野口道直とその仲間たち―

 『尾張名所図会』を編纂した、野口道直(梅居)と、その仲間たちの書画を通じた交流の様子を紹介します。

 道直の還暦祝いの折りに、名所図会編纂メンバーと共に作りあげた寄り合い書きの制作過程と宴の様子を詳しく見ていきます。

上の部分には書による寄書、下の部分には野口道直と仲間たちが寄書を書いている様子が描かれている。

「野口道直六十之宴并賛」
江戸時代後期 天保15年(1844)(館蔵)

⑤画賛の書―唐様とのコラボレーション―

 尾張文人の交流の中から生み出された画賛(画に添えられた詩文)に見える文人たちの交友の幅広さと、唐様(からよう・中国風の書)の書を紹介。江戸時代後期に流行した中国書法をどのように咀しゃくし、唐様として展開していったかに注目します。

山本梅逸よる滝と観音の絵と貫名菘翁による賛文が描かれている

山本梅逸画・貫名菘翁賛 「水月観音図」
江戸時代後期 安政2年(1855)

エピローグ 寄り合い書きの今

 近年流行している、音楽やダンス要素が加わった「書道パフォーマンス」を見ていきます。

 今回は、愛知県立愛知商業高等学校書道部を取材しました。江戸時代と同じように、一つの作品を作りあげる喜びを仲間と共有する高校生の姿を紹介します。

詩が大きく書かれた作品

書道パフォーマンス 作品イメージ

関連イベント

展示説明会

5月2日(木曜・休日) 5月26日(日曜)

担当学芸員が展覧会の魅力を解説します。
いずれも13時30分から(13時開場) 1階展示説明室 定員100名 聴講無料

ギャラリートーク

4月27日(土曜)・5月15日(水曜)

担当学芸員が展示室内で資料の魅力をじっくり語ります。
いずれも13時30分から 1階特別展示室 30名程度 要観覧料

書道パフォーマンス

出演:愛知県立愛知商業高等学校書道部
5月3日(金曜・祝日)14時から 観覧無料 博物館正面玄関前
※会場は天候によって変更する場合があります。

 「書道パフォーマンス甲子園」の全国大会に出場経験がある愛知県立愛知商業高校書道部による書道パフォーマンスをご覧いただきます。今回、書道パフォーマンス甲子園と同じ規格、縦4m×横6mの紙をつかってパフォーマンスしてもらいます。ダイナミックな筆遣いと、世界観を表現するダンスも見どころです。

舞台で高校生たちが大きな作品をつくるところ

作品イメージ

※各種イベントで、障害により手話通訳・要約筆記などによるサポートをご希望の方は、当日の2週間前までに名古屋市博物館までご相談ください。