展示

企画展

企画展 博物館イキ!

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「博物館行き」という言葉があります。一般的には、古くなったモノ、役に立たなくなったモノに使われるようですが、博物館に身を置く者としては声を大にして言いたい。

「博物館に来るものは活き活きしていますよ!」と。

名古屋市博物館は、昨年2017年10月に開館40年を迎えました。名古屋市立の歴史系博物館として誕生し、尾張を主とした地域に関わる考古、歴史、美術工芸、民俗資料を収集してきました。まったくのゼロから始まったにも関わらず、40年あまりで26万点をこえる一大コレクションとなり、そのうち九割以上が寄贈からなる、まさに市民が作り上げたコレクションと言えます。

これらは、元々は個人が収集したものであったり代々家で伝えられたもの、また、生活の中で使っていたものですが、「博物館行き」になった後には、博物館で大事に保管されながら、標本、研究、展示資料など様々に活躍することになります。 そして、こうしたコレクションこそが、この地域の歴史や文化を語る上で欠かせない基本的な資料となっており、博物館は、現在、そして未来の市民にこれらを伝える役割を担っています。

今回の展覧会では、近年博物館が積極的に取り組む テーマから22のお勧めを選びました。この地域の歴史を伝える基本的な資料、新たな発見として注目されたもの、また、市民と一緒になって進めた先進的な活動など、話題性に富んだ内容となっています。 まさに”活き活き”と活躍する資料から、現在の名古屋市博物館コレクションの魅力を知っていただければと思います。

展覧会情報

展覧会名称 企画展 博物館イキ!
会期 平成30年(2018) 4月28日(土)~6月10日(日)
休館日 毎週月曜日(祝・休日の場合開館、その直後の平日休館)と第4火曜日。
5/1、7、14、21、22、28、6/4。
開館時間 9時30分~17時(入場は16時30分まで)

観覧料

一般 高大生 中学生以下 市内在住の65歳以上
300(400)円 200(300)円 無料 100(200)円

※( )内は常設展との共通料金。

※敬老手帳等の掲示が必要。他の割引との併用はできません。

展示構成

企画展「博物館イキ!」では、博物館の活動を22のテーマを切り口として紹介します。

集める

黒い茶碗の写真

重要文化財 黒楽茶碗 銘「時雨」 本阿弥光悦作 江戸時代前期 館蔵

  • 1 森川コレクション
  • 2 富田重助家資料
  • 3 横井庄一生活資料
  • 4 昭和を撮る
  • 5 焼き物
  • 6 刀剣・甲冑
  • 7 猿猴庵の本

名古屋市博物館は、尾張を中心とする地域、および日本の基準となる歴史資料を収集しています。その多くは寄贈されたもので、元々は尾張藩士や代々続く家に伝わった物、コレクターが情熱と時間と時に金銭をかけて集めた物などで、これらを公にし、後世に伝えるために、博物館に託されます。ここには、資料を集めること・残すことへの熱い思いがあります。なかには、横井庄一氏がグアム島での生活で作り使った道具のように、戦争に翻弄された個人の生き方を伝える唯一無二の資料もあります。

こうした思いを受け取りながら、博物館も当地域の特徴ある歴史文化を伝えるために、さらに資料を探し、時に購入するなどして、コレクションの充実に努力しています。

調べる

騎馬武者や火縄銃を構えた足軽、木の柵などを描いた絵

長篠合戦図屏風(部分) 江戸時代前期 館蔵

  • 8 豊臣秀吉文書を調べる
  • 9 長篠合戦図屏風
  • 10 宗教美術の科学的調査
  • 11 名古屋東照宮祭礼図巻
  • 12 機織り

モノは、ただあるだけでは資料となりません。いつ、どのような材質・方法で、何のために作られたのか。様々基本的な情報を調べ、記録する必要があります。多くの資料を見て、聞いて、調べて、初めて正しい位置づけができるのです。

様々な技術の進展で、科学的に資料を調べることも可能となっています。赤外線撮影やX線撮影は、目に見えない文字や資料の構造など隠れた情報を明らかにすることがあります。

学芸員は、まずは目の前の資料と向き合うことが必要です。それらを見ながら、新しい分析方法や研究方法を模索し、資料の持つ情報(=魅力)を最大化するのです。

語る

  • 13 愛知の石器
  • 14 村絵図
  • 15 近代名古屋と書の名筆
  • 16 正木国民学校の学童疎開
  • 17 地域の食文化
  • 18 東アジアの世界
  • 19 尾張の七宝

名古屋市博物館の展示では、名古屋・尾張を中心とする地域の歴史や文化と、日本や世界の歴史・文化を展示することを二つの大きな方針としています。

この地域で生み出されたモノは、この地域の歴史や文化を物語る証人です。石器であったり、文書であったり、博物館資料同士はもちろん、様々な資料を組み合わせることで、この地域を物語ることが可能となります。

さらに、この地域から世界へ、世界から地域へ、そうした歴史や文化のダイナミズムを物語ることもできます。

草花を描いた大きな壺の写真

百花文七宝大壺 明治時代 館蔵

活きる

大きなおかめのつくりものをかつぐ人々の行列を描いた本

高力猿猴庵『御鍬祭真景図略』 江戸時代後期 館蔵

大きなおかめのつくりものを先頭に歩く行列の写真

再現された造り物とお鍬祭り 平成19年(2007)

  • 20 伊勢湾台風資料の収集
  • 21 よみがえれ文化財
  • 22 お鍬祭り

近年、博物館資料を「活用」することが様々な場面で求められています。これまでの博物館ではその大部分が展示でした。しかし、インターネットなどで容易に画像が見られるようになった現在、「見せる」だけでは、十分ではありません。それに加えて、新しい視点から活用方法を切り開いていくことも必要となっています。

例えば、江戸時代に行われたマツリを、博物館資料を元に現代に復活させることで、マツリに参加する人々は歴史に学びながら現代を活きていく。こうした博物館の様々な活動に多くの人々が関わる中で、参加した人々にとっても、これまで知らなかった歴史文化の根本に触れ、知的好奇心が刺激され活き活きとなる。

名古屋市博物館はこうした新しい活動を行いながら、粋な博物館を目指していきます。

関連イベント

イベントへの参加にあたり、障害等により特別な配慮が必要な方は、2週間前までに博物館までご相談ください。

ギャラリートーク

「博物館イキ!」では、会期中の土・日・祝休日に毎回違う学芸員が担当した1テーマについてじっくり解説します。

会場:展示会場内(要観覧券)

日時:会期中の祝休日 ※5月3日(木曜・祝日)はのぞく
10時30分~(20分程度)

  • 4月28日(土曜)T1森川コレクション(山本祐子)
  • 4月29日(日曜・祝日)T5焼き物&T20伊勢湾台風資料の収集(瀬川貴文)
  • 4月30日(月曜・休日)T9長篠合戦図屏風&伊勢参宮図屏風(津田卓子)
  • 5月4日(金曜・祝日)T11「名古屋東照宮祭礼図巻」を読む(鈴木雅)
  • 5月5日(土曜・祝日)T12機織りの実践からみえること(佐野尚子)
  • 5月6日(日曜)T3横井庄一生活資料(竹内弘明)
  • 5月12日(土曜)T16正木国民学校の学童疎開(加藤和俊)
  • 5月13日(日曜)T13愛知の石器(川合剛)
  • 5月19日(土曜)T8秀吉文書を調べる(岡村弘子)
  • 5月20日(日曜)T2富田重助家資料(桐原千文)
  • 5月26日(土曜)T6刀剣・甲冑&T10宗教美術の科学的調査(山田伸彦)
  • 5月27日(日曜)T17地域の食文化(長谷川洋一)
  • 6月2日(土曜)T15近代名古屋と書の名筆(星子桃子)
  • 6月3日(日曜)T18東アジアの世界(藤井康隆)
  • 6月9日(土曜)T22お鍬祭り(武藤真)
  • 6月10日(日曜)T19尾張の七宝(横尾拓真)

*T=テーマ

はくぶつかん講座「博物館行きから活きへ~魅惑のコレクション」

日時:5月3日(木・祝)10時30分から1時間程度

場所:展示説明室(定員当日先着100名)

当館学芸員

聴講無料。