特別展 天理大学創立90周年記念特別展 ギリシア考古学の父 シュリーマン
ギリシャ神話の世界が名古屋によみがえる!?
トロイ伝説の舞台となったミケーネ文明が実在したことを証明し、「ギリシャ考古学の父」と呼ばれるシュリーマン。彼が精力的に刊行した発掘調査報告書からは、ホメロスの叙事詩で読んだ古代ギリシア世界の実像を知りたい!そしてたくさんの人に知ってもらいたい!という情熱が伝わってきます。
この展覧会では、発掘調査報告書『ティリンス』の貴重な原画を中心に取り上げ、波瀾万丈な人生を歩んだシュリーマンという人物の魅力と、彼が魅了された古代ギリシア世界、そして誕生したばかりの考古学について紹介します。
ティリンス遺跡(巽善信氏撮影)
ハインリヒ・シュリーマン(1822~1890)は、ギリシア神話の「トロイの木馬」伝説の舞台となったトロイ遺跡を発掘したことで知られるドイツ人考古学者です。彼の自伝『古代への情熱』によれば、子どもの頃からギリシア神話の世界に憧れ、努力を重ねて財産を築き、ついにはトロイ発掘の夢を叶えたとされています。そしてこのサクセスストーリーは、子どもに夢を与える理想の人生として、多くの偉人伝に取り上げられてきました。
しかし、近年の研究では、シュリーマンが考古学を志したのは実は中年になってからであることなど、これまでのイメージとは異なるシュリーマン像が明らかになってきています。
本展では、シュリーマンが晩年に発掘した世界遺産ティリンス遺跡の貴重な報告書原画から、彼の実像に迫ります。ティリンス遺跡は、トロイと争ったとされるミケーネ文明(紀元前1700~1200年頃)の重要な都市で、巨人が築いたという伝承を持つ重厚な城壁が特徴です。さらに本展では、シュリーマンが魅せられたギリシアやエジプトの古代文明、そして彼の生きた19世紀の考古学について紹介します。
シュリーマンは、詩人ホメロスの描いたギリシア神話の世界に魅了され、発掘を始めました。シュリーマンの憧れた古代ギリシアの世界を天理参考館所蔵の優品から紹介します。
把手付杯(天理参考館蔵)
鳥文短剣(天理参考館蔵)
ティリンスは、シュリーマンが本格的な発掘に取り組んだ最後の遺跡です。シュリーマンによって才能を見出された若き考古学者ヴィルヘルム・デルプフェルト(1853~1940)が驚異的に精巧な遺構図を作成し、シュリーマン自ら出土品の考証に取り組むなど、シュリーマンによる発掘事業の集大成だったと言えます。ここでは、発掘調査報告書『ティリンス』の貴重な原画を通して、偉大な考古学者の到達点を紹介します。
図版Ⅰ「要塞ティリンスの平面図」原画(天理参考館蔵)
図版ⅩⅢ「ティリンス宮殿の壁画、牛の背で踊る男の図」原画(天理参考館蔵)
図版ⅩⅩⅢ・ⅩⅩⅣ原画(天理参考館蔵)
シュリーマンの生きた19世紀は西欧列強が世界中へ進出した時代。印刷技術の進歩もあいまって、各地で学術的な調査が行われ、報告書が盛んに刊行されました。ここでは、シュリーマンの発掘報告書をはじめ、ナポレオンの『エジプト誌』やシーボルトの『日本』など、この時代の重要な調査報告書の初版本を展示します。
ナポレオン皇帝版『エジプト誌』(天理図書館蔵)
シーボルト『日本』(天理図書館蔵)
また、この時代に重要な調査対象となった地域の1つにエジプトがあります。シュリーマンも、ティリンス発掘の後にエジプトで発掘を試みました。地中海を通じてギリシアとも深く結びついていた古代エジプトについても紹介します。
ヌン碗(天理参考館蔵)
精霊像(天理参考館蔵)
本展会期中、7日間のみの期間限定で、『シュリーマンの書簡』を展示します。
2016年(平成28)12月17日(土)・18日(日)
2017年(平成29)1月25日(水)~29日(日)
これは1874年3月14日付けでシュリーマン某博士にあてて出した書簡です。シュリーマンの直筆で書かれた貴重な資料で、シュリーマンの発掘調査報告書『トロイアの古代遺跡』の反響の大きさを伝える内容です。
一般 | 高大生 | 中学生以下 |
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800(600)円 | 600(400)円 | 無料 |
*( )内は前売り・20名以上の団体料金。
*前売券は12月16日(金)まで、名古屋市博物館・主要プレイガイド・主なコンビニエンスストア・チケットぴあ(Pコード:767-826)・ローソンチケット(Lコード:45352)などで発売。
*名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用してご来館の方は100円引き。
*身体等に障害のある方または難病患者の方は、手帳または受給者証のご提示により本人と介護者2名まで当日料金の半額。
*各種割引は重複してご利用いただくことはできません。ご了承ください。
会 期 | 2016年12月17日(土)~2017年1月29日(日) |
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休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)・第4火曜日・年末年始 12/19・26・29~31、1/1~3・10・16・23・24 12月27日(第4火曜日)は特別開館 |
開館時間 | 9時30分~17時(入場は16時30分まで) |
会 場 | 名古屋市博物館 (名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1 地下鉄桜通線桜山駅下車徒歩5分) |
主 催 | 名古屋市博物館 天理大学 天理大学附属天理参考館 毎日新聞社 日本経済新聞社 テレビ愛知 |
イベントのご案内
講師:周藤芳幸氏(名古屋大学教授)
(講師より)偉大な考古学者として知られるシュリーマンは、現在ではその著作に含まれる様々な虚偽の存在が明らかにされた結果、が相半ばする存在となっています。しかし、精力的な遺跡の発掘調査を通じてギリシア先史考古学という一つの学問体系を打ち立てた彼の学術的功績は、今日でも揺るぐことはありません。この講演では、そのシュリーマンの生涯の光と影を同時代の歴史に中に辿りながら、彼の功績の真の意義を明らかにしたいと思います。
会場:講堂(定員220名)
講師:巽善信氏(天理大学附属天理参考館学芸員)
(講師より)世界的に有名なシュリーマンの原画が、本当に手元にあるものだろうか――手にしながら戸惑ったことから探求は始まりました。ギリシア、ドイツへと渡り、ティリンス遺跡原画に関する調査を続けていくにつれて、様々な事実が明らかとなっていくと共に、掴んだと思えば消えて行くシュリーマンがいました。そしてついに「最後のシュリーマン」とも呼べる人物像が浮かび上がってきたのです。ティリンス原画を巡る知的冒険へ誘います。
会場:講堂(定員220名)
考古学はどのようにして過去の社会を明らかにしてきたのか、また現代の発掘調査はどのように行われているのかを、考古学を専門とする学芸員が語ります。
講師:村木誠(当館学芸課長)・深谷淳(名古屋市文化財保護室主査)
会場:展示説明室(定員80名)。
シュリーマンは考古学者になる以前に世界一周の旅をして、幕末の日本にも立ち寄りました。その時に書かれた旅行記から、シュリーマンの人柄や当時の日本社会を読み解きます。
1月4日 来航編/1月5日 横浜・八王子編/1月6日 江戸編
講師:鈴木 雅(当館学芸員)
会場:展示説明室(定員80名)。
シュリーマンや考古学について楽しく学べる体験・ミニゲームコーナーです。
2016年12月18日(日)14時から(13時30分開場)
出 演:桂九雀
演 目:考古学から題材をとった新作落語「縄文さん」「埴輪盗人」、他に古典落語1席。
入場料:一般2,200円 高大生:1,500円 小中生:500円(前売・当日とも。シュリーマン展の観覧券とセット料金)
*未就学児の入場はできません。
会 場:講堂(定員220名)。
主 催:毎日文化センター・「シュリーマン展」実行委員会
*チケット購入は毎日文化センター落語係まで。
TEL:052-581-1521
受付時間:9時15分から20時まで(日曜日は16時まで)