展示

特別展

陸前高田のたからもの

陸前高田のたからもの 2016/2/27~3/27

 陸前高田市は、2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、まち全体が大津波に飲み込まれ、歴史や文化の記憶を伝える文化財にも大きな被害が及んでいます。

 被災した資料は、全国各地の博物館関係者のみならず、地域の住民の方の協力により救出され、修復が行われています。そして、修復された文化財が、地域の歴史や文化を未来へとつないでいく存在として、復興を進める町の精神的なよりどころとなることに、大きな期待が寄せられています。

 本展覧会は、岩手県の沿岸南部に位置する陸前高田市の博物館で被災し、その後修復された資料を中心に、文化財再生の取り組みの実状と成果、文化財の修復を通じてまちの記憶をつないでいくことの意義を紹介します。あわせて、それらの修復された資料が伝える陸前高田市の歴史・文化を紹介します。

 名古屋市では、震災直後から陸前高田市への「行政丸ごと支援」を実施しており、2012年には、子供たちの交流を深めるための「絆協定」を結びました。さらに2014年には、友好都市の協定を結び、協力関係を深めています。

 本展覧会が、陸前高田市への理解を深めていただき、被災地に心を寄せていただく機会になることを願っております。

観覧料

一般 高大生 中学生以下 市内在住の
65歳以上の方
300(400)円 200(300)円 無料 100(200)円
(敬老手帳等の提示が必要です。
他の割引との併用はできません)

*部門展示室で開催する「東日本大震災からの復興と名古屋」のみの観覧は無料

(  )内は常設展との共通観覧料金

*30名以上の団体料金はお問い合わせください。

*身体障害者手帳 戦傷病者手帳 被爆者健康手帳 精神障害者保健福祉手帳 愛護手帳(これに類する療育手帳を含む)の提示により、本人と介護者2名まで無料

*名古屋市交通局の「一日乗車券」「ドニチエコきっぷ」を利用してご来館した場合は、提示により50円引き

*各種割引は重複してご利用いただくことはできません。

会期 平成28年2月27日(土)~3月27日(日)
休館日 月曜日(祝日の場合は直後の平日)・毎月第4火曜日(2/29・3/7・3/14・3/22)
*3/21(月・祝)は開館
開館時間 午前9時30分~午後5時 入場は午後4時30分まで
主 催 名古屋市博物館
津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会
会 場 名古屋市博物館特別展示室

展示構成

プロローグ 2011.3.11

 2011年3月11日14時46分、東日本大震災発生。岩手県の沿岸南部に位置する陸前高田市でも、まち全体が強い揺れに見舞われました。そして、その40分後には、約20m近い大きな津波が市街地に到達しました。多くのものが失われましたが、地域の歴史や文化の記憶を伝える文化財も例外ではありませんでした。

地震で止まった時計(陸前高田市立博物館蔵)

地震で止まった時計
(陸前高田市立博物館蔵)

津波で止まった時計(陸前高田市立博物館蔵)

津波で止まった時計
(陸前高田市立博物館蔵)

Ⅰ よみがえるふるさと

 陸前高田市内にあった資料は、博物館にかかわる多くの人たちの尽力により、よみがえりつつあります。これら修復された資料は、再び陸前高田のまちの記憶を語り始め、まちの記憶を未来に伝えることが期待されています。
 陸前高田市が誇る名勝高田松原も、津波によって消失してしまいましたが、それにまつわる資料がよみがえることで、美しい景色の記憶を今後につなぐことが出来るようになりました。

吉田啓一 「冬の松原」(陸前高田市立博物館蔵)

吉田啓一 「冬の松原」(陸前高田市立博物館蔵)

Ⅱ「たからもの」を救え!―文化財レスキューと安定化処理―

  災害発生時に行なわれる文化財の救出活動全般を「文化財レスキュー」と呼んでいます。
東日本大震災においては、阪神淡路大震災の教訓を生かし、震災直後から文化財を被災現場から安全な場所へと移送する「一次レスキュー」活動が展開されました。

 被災した文化財の多くは、大きな損傷を受けているため、急速な劣化を防ぐ「安定化処理」が施されます。特に海水に浸かった文化財の修復は国内外に事例がないため、作業は日夜試行錯誤しながら進められています。

津波で被災した昆虫標本洗浄(陸前高田市立博物館蔵)

津波で被災した昆虫標本洗浄
(陸前高田市立博物館蔵)

修復した昆虫標本(陸前高田市立博物館蔵)

修復した昆虫標本
(陸前高田市立博物館蔵)

Ⅲ「たからもの」がつたえる陸前高田

救出された文化財には、陸前高田という町や陸前高田に暮らした人々の記憶が詰まっています。だからこそ、博物館資料は「たからもの」であるといえるのですが、これらが「たからもの」であり続けるためには、これらの資料から、どのような記憶を紡ぐことができるのか、ということも重要になってきます。

Ⅲ-1自然

 陸前高田市は海・山双方に囲まれた自然豊かな土地です。震災が引き起こした地盤沈下や大津波によって、生態系が一変してしまったがゆえに、これら資料はかつての陸前高田の自然を物語る貴重な存在となっています。
 また、地元の自然史発展に尽力した鳥羽源蔵に関連した資料も合わせて紹介します。

ヒレガイ(陸前高田市立博物館蔵)

ヒレガイ(陸前高田市立博物館蔵)

Ⅲ-2歴史

 陸前高田の歴史を、縄文から古代・近世・近代と大きく3つに分けて紹介します。
 縄文時代から古代では、縄文時代の貝塚から出土した資料が充実しています。
 また、伊達家から大肝入(大庄屋)に任ぜられた吉田家の政務誌「吉田家文書」には、江戸時代の陸前高田の様子が詳細に記されています。
 近代の教育資料も充実しています。

銛頭 南境型(陸前高田市立博物館蔵)

銛頭 南境型(陸前高田市立博物館蔵)

吉田家文書(個人蔵)

吉田家文書(個人蔵)

Ⅲ-3 産業

 陸前高田を代表する産業である漁業を支えた漁撈具、寺社建築における高水準の技術を武器に活躍した気仙大工、山間部で盛んに営まれていた養蚕など、陸前高田の産業について道具とともに紹介します。特に、漁撈具は近代以降に使用されている漁撈具全般を網羅していることから、全国的な評価も高く、国の登録有形民俗文化財となっています。

モリ・ヤス(陸前高田市立博物館蔵)

モリ・ヤス(陸前高田市立博物館蔵)

Ⅲ-4 民俗

 絵馬や人形などから陸前高田に残る、多様な民俗を紹介します。特に東北地方を代表する民間信仰のご神体「オシラサマ」を所有する世帯数においては、陸前高田市は日本一を誇ります。

オシラサマ(陸前高田市立博物館蔵)

オシラサマ(陸前高田市立博物館蔵)

エピローグ 「たからもの」がつなぐ想い-文化財の残らない復興は本当の復興ではない-

 陸前高田市民によって収集され、現在に至るまで愛されている資料は、市民の思いによって守られ、救われ、「たからもの」となりました。震災によって、甚大な被害を受けましたが、博物館関係者の技術と熱意、市民の協力と理解に支えられて、見事に復活を果たしました。

 「文化財の残らない復興は本当の復興ではない」と、陸前高田市の学芸員さんはいつも語っています。文化財は、豊かな歴史や文化、まちがもつ様々な記憶を次世代に継承していくことのできる大切なたからものです。

リードオルガン(陸前高田市立博物館蔵)

リードオルガン
(陸前高田市立博物館蔵)

青い目の人形(陸前高田市立気仙小学校蔵)

青い目の人形
(陸前高田市立気仙小学校蔵)

アカショウビン(陸前高田市立博物館蔵)

アカショウビン
(陸前高田市立博物館蔵)

関連事業

ギャラリートーク「たからものが語る陸前高田」

①2月27日(土)②3月19日(土)③3月27日(日)14:00~

学芸員が特別展示室内にて、資料にまつわるエピソードを交えて、展覧会をご案内します。

*観覧券をお求めの上、ご参加下さい。

被災地の今を伝える報告会 3月6日(日)14:00~ 講堂

東日本大震災の復興協力のために派遣された本市職員、陸前高田との交流を行っている学生などの報告により、被災地の今の姿を紹介します。

報告会は五部構成です。さまざまな場面での取り組みを紹介します。生の声をきくことができます。

  • ① 陸前高田市教育委員会教育長と、名古屋市側からは絆協定締結に尽力した当時の教育委員長と当時の教育長(現名古屋市博物館長)。三人による対談。
  • ② 両市の教育委員会が結んでいる「絆協定」にもとづく子どもたちの交流。陸前高田市を訪問した名古屋市立中学校生徒の発表。
  • ③ 名古屋市立大学医療系学生サークル「はまけら」の活動報告。
  • ④ 住宅の高台移転などに先立つ埋蔵文化財調査に参加した、考古学芸員の報告。
  • ⑤ 名古屋市がおこなっている陸前高田市への行政丸ごと支援から「区画整理事業」について。

*参加無料。12:30整理券配布。当日先着順(定員220名)

講演会「文化財の再生にかける思い」 3月12日(土)14:00~ 講堂

 講師:東京国立博物館特任研究員:神庭信幸氏(保存科学)

*参加無料。12:30整理券配布。当日先着順(定員220名)

被災資料安定化処理ワークショップ 3月18日(金) 展示説明室
10:00~講演会「被災博物館資料の救出と安定化処理」

講師:岩手県立博物館首席専門学芸員 赤沼英男氏

14:00~ワークショップ  海水損した紙資料及び民俗資料に対する安定化処理

*ワークショップの内容は主に専門家を対象としたものですが、一般の方も参加できます。
参加ご希望の方は事前にお問い合わせください。

リードオルガン ミニコンサート

陸前高田市立博物館で被災し、修復を経てよみがえった海保製リードオルガン。国内でも3台しか存在しないこの貴重なオルガンによるミニコンサートを、展覧会の会場内で開催いたします。修復に携わった関係者から貴重なエピソードもうかがうことのできるまたとない機会です。
是非、ご鑑賞ください。

日時 ①3月12日(土)15:30~ ②3月19日(土)14:00~

会場:名古屋市博物館 特別展「陸前高田のたからもの」会場内
*観覧券をお求めのうえ、ご参加ください。

①3月12日(土)15:30~

演奏:中村由利子氏 (作曲家・ピアニスト)

解説:東京国立博物館特任研究員 神庭信幸氏

*同日14:00~神庭氏による講演会「文化財再生にかける思い」を開催します。あわせてご参加ください。(参加無料・12:30から整理券配布・当日先着順(定員220名))

②3月19日(土)14:00~

演奏:大森幹子氏 (日本リードオルガン協会会員)

解説:陸前高田市立博物館副主幹 熊谷賢氏

*同日14:00~熊谷氏のギャラリートークと同時開催いたします。

部門展示室にて同時開催 東日本大震災からの復興と名古屋 *部門展示室のみの入場は無料

 特別展「陸前高田のたからもの」の開催に合わせ、名古屋市が、陸前高田市をはじめとする被災地で行っている復興への取り組みを紹介します。

「行政まるごと支援」

 名古屋市では、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市の行政全般を、丸ごと支援する取り組みを行っています。これまでの活動の記録とともに、派遣された職員の奮闘ぶりを紹介します。

「絆協定」

 名古屋市教育委員会では、東日本大震災以降、陸前高田市と名古屋市の中学生どうしの交流を進めてきました。そして、このつながりを今後につなげていくため、平成24年5月、「絆協定」を締結しました。中学生の交流のあゆみを紹介します。

「なごや子ども市会」

 「なごや子ども市会」で行っている、市内に在住・在学する小学5・6年生からなる子ども議員と陸前高田市の子どもたちのとの交流を紹介します。

「宮古市との文化財交流」

 名古屋市教育委員会では、岩手県宮古市での、東日本大震災からの復興に伴う埋蔵文化財発掘調査に対して職員を派遣し、調査体制の充実に協力しています。派遣された職員の活動とともに、これを契機として行っている宮古市との文化財交流を紹介します。

「名古屋市の防災の取り組み」

 東日本大震災からの復興に対する支援・協力は、名古屋市の防災の取り組みについて考え、対策について学ぶ機会でもあります。名古屋市の防災への取り組みを紹介します。