展示

企画展 エピソードでたどる書の散歩道 Walking with Calligraphy

エピソードでたどる書の散歩道

人は死して筆跡を残す…

 歴史に名を残した人の書、時代を語る書、芸術としての書、実用としての書など、私たちの時代にはさまざまな書が伝えられています。それぞれの書からは、筆を執った人の息づかいや人となり、その時代の雰囲気が立ちのぼってきます。書の中には失われた一瞬の時間や思いが封じ込められているのです。
 この展覧会では、古代から近代にわたるさまざまな書をひもとき、ちょっと変わった切り口で、その魅力を探っていきます。

会期:2015年2月28日(土)~4月5日(日)

休館日:毎週月曜日と第4火曜日(3/2・9・16・23・24・30)

開館時間:午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)

主催:名古屋市博物館

観覧料:一般 300円(400円) 高大生 200円(300円) 中学生以下無料
市内在住の65歳以上100円(200円) 敬老手帳の提示が必要。他の割引との併用不可。

※( )内は常設展との共通料金。

※名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用して来館された方は50円割引。

※身体等に障害のある方は手帳の提示により、本人と介護者2人まで料金無料。

※各種割引は重複してご利用いただくことはできません。

※30名以上の団体は割引があります。お問い合わせください。

30のエピソード

…裏から斜めから、こんな見方はいかがです…

第一章<書は人なり 歴史に名を残した人の書>

1 どちらが若書き?先端を行く歌人の筆跡

<藤原俊成筆「昭和切(ぎれ)」「日野切」>

2 高僧だってたまにはぐちもこぼしたい

<「栄西書状」>

3 人の御心は定なきもの…

<「日蓮書状」>

4 弟子に残す言葉

<重要文化財 無住(むじゅう)筆「置文(おきぶみ)」>

5 戦国武将の遺言状

<「森長可(ながよし)遺言状」>

6 えっ、殿様直筆の領収書

<「徳川家康尾州年貢皆済状(びしゅうねんぐかいさいじょう)」>

7 やはり手紙が魅力

<「本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)書状巻」>

8 花開く個性

<近衛信尹(このえのぶただ)・角倉素庵(すみのくらそあん)・烏丸光広(からすまるみつひろ)・小堀遠州(こぼりえんしゅう)・松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)>

9 44歳、彼を変えたのは旅

<松尾芭蕉筆「いざ出む」発句懐紙(ほっくかいし)など>

10 希代の画家の字は、以外にユーモラス

<「与謝蕪村絵入り書状」>

11 無欲の境地

<良寛の書>

12 借金はかくいたすべし

<「葛飾北斎絵入り書状」>

13 雨の日は「大惣」へ行こう!

<キャッチコピーが得意だった滝沢馬琴・「大惣」こそ心のふるさと、坪内逍遙(つぼうちしょうよう)>

14 絶筆、最後の書

<勝海舟筆 一行書「律己宜帯秋気…」>

15 帝国議会、嵐の船出

<「伊藤博文書状」>

第二章<筆跡ラプソディー>

16 一切経の世界

<重要文化財「七寺一切経」・重要文化財「過去現在絵因果経(えいんがきょう)」>

17 これぞ茶掛けの最高峰

<重要文化財「寸松庵色紙」>

18 永遠のあこがれ、平安古筆(こひつ)

<重要文化財『三宝絵(さんぽうえ)』など>

19 三人の西行

<重要美術品「白河切」など>

20 書の世界に新風

<伏見天皇筆「筑後切」など>

21 中世にもあった再生紙

<「後光厳天皇綸旨(ごこうごんてんのうりんじ)」など>

22 時代を生き抜いた女性の書 

<天皇の母の走り書き 重要美術品「広義門院(こうぎもんいん)所領処分状」・桃山キャリアウーマンの書 幸蔵主(こうぞうす)筆「北政所(きたのまんどころ)黒印状」・殿様には強い母がいた 「相応院(そうおういん)書状」など>

23 擬宝珠(ぎぼし)に刻まれた母の想い

<「裁断橋(さいだんばし)擬宝珠」

24 勢揃い、武将たちのサイン

<「足利尊氏袖判禁制(あしかがたかうじそではんきんぜい)」・「織田信長書状」・「伊達政宗書状」など>

25 ぬれぎぬを晴らす魔法の紙

<松花堂昭乗起請文(きしょうもん)」>

26 三行半の美学

<「去り状」など>

27 一目瞭然 冷泉フォント

<藤原定家筆「紹巴切(じょうはぎれ)」・冷泉為理(れいぜいためただ)筆「和歌懐紙」>

28 筆跡のコレクション

<古筆手鑑(てかがみ)「宝墨亀鑑(ほうぼくきかん)」・「古筆貼交(はりまぜ)屏風」>

29 絵と書の競演

<「源氏物語色紙貼交屏風」「伊勢物語手鑑」>

30 縫いとられた「国歌」

<「雪持ち桐に文字模様小袖」>

展覧会のみどころをちょっと紹介します。

エピソード2 高僧だってたまにはぐちもこぼしたい -資金難に殺人事件、坐禅や喫茶どころじゃない-

 栄西(えいさい・ようさい)といえば、平安時代の末期、二度も中国(宋)に渡ってわが国に禅と茶をもたらしたエリート僧。日本臨済宗の開祖として有名です。俗世間とは無縁のイメージですが、その晩年には、平家によって焼かれた東大寺の再建という大変な事業に巻き込まれてしまいました。資金難に加え、「大仏殿回廊内殺人」事件までが勃発。栄西はこの未曾有の不祥事に愁歎し、悲しみの涙に暮れました。この知られざる栄西像は、近年、大須観音(宝生院真福寺(ほうしょういんしんぷくじ))にある文庫から発見された15通の手紙によって明らかになりました。今回はその内から3通を紹介します。

栄西書状

写真 愛知県指定文化財「栄西書状」
鎌倉時代 大須観音蔵

エピソード12 借金はかくいたすべし -北斎先生に聞く、借金の仕方-

 真ん中で腰を折ってへりくだっているのが北斎。後ろ姿ながら、まぎれもない北斎の自画像!?

葛飾北斎絵入り書状

写真 「葛飾北斎絵入り書状」
江戸時代 館蔵

エピソード14 絶筆、最後の書 -すべて春風の面(おもて)を払って去るごとき心境-

 勝海舟は、疋田(ひきた)家に嫁いだ娘が産んだ孫夫婦と共にその晩年を過ごしました。孫の妻たつは海舟のお気に入りで、海舟が揮毫(きごう)の際、かたわらで墨をすったりしたのだそうです。そのたつに与えた処世訓が、海舟絶筆として伝わっています。「己(おのれ)を律するはよろしく秋気を帯ぶべし、世を処するはすべからく春風を帯ぶべし」。海舟晩年の語録集『氷川清話(ひかわせいわ)』にも「天下の事、すべて春風の面を払って去るごとき心境、この度胸あって始めて天下の大局に当たることができる」という一節があります。明治維新の大立者(おおだてもの)は、春風のように颯爽(さっそう)とした筆跡を遺して去っていきました。

勝海舟一行書「律己宜帯秋気…」と所用の椅子

写真 勝海舟一行書「律己宜帯秋気…」
と所用の椅子 明治時代 館蔵
※背景の床の間は勝海舟と関係ありません。

エピソード18 永遠のあこがれ、平安古筆(こひつ)

重要文化財『三宝絵』

写真 重要文化財『三宝絵』平安時代 館蔵

「石山切」

「石山切」平安時代 法音寺蔵

「関戸本和漢朗詠集切」

「関戸本和漢朗詠集切」平安時代 八勝館蔵

エピソード22 時代を生き抜いた女性の書 -殿様には強い母がいた-

「相応院書状」

写真 「相応院書状」江戸時代 館蔵

エピソード30 縫いとられた「国歌」 -薄命の姫の嫁入り衣装-

  「君が代」はもとを正せば『古今和歌集』に収められた賀歌でした。それが国歌としての道を歩み始めたのは明治2年のこと。対外的に儀礼用の国歌が必要となり、この和歌に白羽の矢が立ったのです。奇しくも同じ頃の明治4年、嫁いだお姫様がいました。尾張徳川家12 代当主斉荘の4女釣姫です。釣姫は婚礼後、わずか3か月で亡くなりましたので、「君が代」の歌が縫いとられたこの小袖は釣姫の形見として遺されました。格式の高い姫君の嫁入り衣装に、伝統のある、かつ当代の脚光を浴びた歌をあしらう。そんな粋なはからいを想像してしまう小袖です。

「雪持ち桐に文字模様小袖」

写真 「雪持ち桐に文字模様小袖」
江戸後期~明治

連続講座「書を楽しむ」

 展覧会に出品されている書を、さまざまな角度からわかりやすく解説します。

第1回 3月8日(日)  手紙の楽しみ

こんな風に手紙が書けたら人生はもっと豊かになるはず。個性が光る、光悦・蕪村・良寛・北斎等の手紙を鑑賞します。(当館学芸員 山本祐子)

第2回 3/14(土) 書の流れ

日本には、文字をきれいに、うつくしく、かっこよく書こうとしてきた歴史があります。展示品を通して、書の歴史をのぞいてみましょう。時代順にわかりやすくご紹介します。 (当館学芸員 星子桃子)

第3回 3/21(土・祝) 古筆切の話

みんながあこがれる平安時代の筆跡。美しさがあだとなって、多くが分断されて伝わりました。でもその分断の歴史の中には、別の日本文化が見え隠れします。(当館学芸員 山本祐子)

第4回 3/25(水)  競い合う料紙と書

金銀箔や下絵で装飾された目も綾な料紙。書を引き立てるためのものですが、時には書と一体となって私たちを魅了します。料紙と書の熱い関係に迫ります。(当館学芸員 山本祐子)

いずれも午後2時から 展示説明室 聴講無料 各回先着100名

講師 当館学芸員

展示の一部変更のお知らせ

次の作品は都合により、4月1日から3日まで写真パネルで紹介します。
50「関戸本和漢朗詠集切 水」