展示

常設展テーマ10

横井也有 十二か月の句

平成26年4月23日(水)~5月25日(日)

ほっくがさん写真

十二か月発句画賛より三月

 横井也有(やゆう)〈時般(ときつら) 1702-83〉は、譜代の尾張藩家臣横井孫右衛門家の第6代当主で、寺社奉行や用人などの要職を勤める一方、俳人としても活躍しました。数多くのユニークな作品を残しましたが、今回は最近受贈した「十二か月発句(ほっく)画賛」を紹介します。
 正月は注連縄(しめなわ)、二月は梅、という具合に各月ごとの景物を略画で描き、洒脱な文章と発句を添えた作品です。写真は三月で、ひらひらと舞う胡蝶(こちょう)の図に、「弥生の空の長閑さに、縁先に出て庭をながめていると蝶々が飛び交って、陽炎(かげろう)もゆらゆら燃えるようだ。とても眠たくなったので、ひじ枕して(訳)」という詞書きのあとに「たが夢のそひ寝ぞ蝶のふたつ連」という句が書かれています。「たが夢」という言葉には、中国の故事、夢の中で蝶になった荘子が、夢から覚めても自分が本当は人間なのか蝶なのかわからなくなった、という話が隠されています。夢と現実との境があいまいになって、どこかおぼろにかすんだ春の雰囲気が漂ってきます。「野有(やゆう)」と署名していますが、也有は若い頃、この表記をよく用いました。