展示

常設展フリールーム

なごやのうつりかわり

 「なごやのうつりかわり」は小学3年生の社会科の学習単元に沿った展示です。展示では、交通機関や土地利用、暮らしの道具などさまざまな視点から、近代以降の名古屋がどのように変わってきたかをみていきます。今年は常設展示室内3か所に分けて展示しています。

 なお、この展示は小学3年生に伝わりやすいようにやさしい解説になっています。また、展示期間中の平日は多くの小学生が団体見学をしていることがありますので、ご了承ください。

交通機関のうつりかわり(展示場所:フリールーム)

 現在名古屋市では、道路が市内を網羅して車が行き交い、公共交通機関として鉄道やバスが充実しています。現在の交通を形作った始まりは、名古屋駅でした。名古屋駅は明治19年(1886)に作られ、明治22年(1889)東海道本線の全通により、東西の中継地点として重要な場所になりました。名古屋駅を開設した当初は田んぼが広がる地域でしたが、駅ができたことによって、人々の移動がおき、路面電車も通るようになり、駅のまわりはにぎやかになっていきました。

 名古屋市内を移動するための交通機関も整備されました。路面電車は明治31年(1898)に開設、街と街、街と工場などを結び、人々の往来が活発になっていき、市内の人口も増えていきました。昭和40年代からは自動車を持つ一般家庭が増え始め、自動車は瞬く間に生活必需品となりました。自動車の増加にともない、一般道、高速道路ともに整備されましたが、交通渋滞が問題化していきました。そのため、道路上に線路のある路面電車は、しだいに地下鉄へ移行し、昭和49年(1974)にその役目を終えました。地下鉄は、昭和32年(1957)に初めて開通し、徐々に路線を拡大させてきました。現在地下鉄は市内に張り巡らされており、市民の重要な移動手段になっています。

黄色い地下鉄の車両

絵葉書:名古屋で最初の地下鉄 昭和32年(1957)頃

土地利用のうつりかわり(展示場所:展示室入口付近)

 現在の名古屋市は商業店舗が集まる地域や住宅地が大部分を占めていますが、さかのぼれば、田畑が広がる地域も多く、漁業を営む地域もありました。農業は、土地の環境に合わせた道具を使って、米や麦などを作っていました。市東部の丘陵地では、人口が増加したことにより、宅地開発が行われ、団地が建ち並び、田畑や山は消えていきました。

 また中川区下之一色などの沿岸の地域では、古くから漁業が行われており、さまざまな漁法で伊勢湾の魚や貝を獲って暮らしていました。しかし、昭和34年(1959)の伊勢湾台風によって高潮防波堤の建設が計画され、漁業は行われなくなりました。明治40年(1907)に開港した名古屋港は、外国との貿易を行う重要な港として発展していました。昭和30~40年代にかけて、軽工業から重化学工業へと転換していくと、埋め立てを行って工場を立て、臨海工業が発展しました。

 都心部では、昭和29年(1954)に名古屋でテレビ本放送が始まることに合わせてテレビ塔が完成しました。テレビ塔の完成により観光に訪れる人々が集まり、まわりは公園が整備され、今ではランドマークであるとともに憩いの場となっています。

団地の風景

絵葉書:千種台住宅地 昭和32年(1957)以降

生活道具のうつりかわり(展示場所:テーマ15)

 昭和30年代、電気洗濯機・白黒テレビ・電気冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれ、電化製品が生活にかかせないものになりました。それ以前は、自然の素材や力を利用した道具を使った暮らしが長く続いていました。

 たとえば洗濯は、明治以降洗濯板と盥(たらい)を使った洗濯が行われていました。盥に水を張り、洗濯物に石けんを付けて、幾重にも溝のついた洗濯板の上でこするように押し洗いをするというものでした。溝に石けん水がたまって、汚れを落とす仕組みです。より多くの石けん水がたまるように溝を波型に工夫したものもありました。洗濯板による洗濯は、汚れを落とすことに優れていましたが、一つ一つ手で洗わなくてはならず、重労働でした。

 電気洗濯機は昭和5年(1930)に国産化されましたが、普及したのは先にも述べたとおり昭和30年代でした。当時の洗濯機は、洗濯槽に水を張り、洗濯物を入れてタイマーを回し洗濯物を自動で回転させ、洗いもしくはすすぎをするというものでした。また、脱水はローラーとローラーの間に洗濯物をはさみ、ハンドルで回して絞りました。ローラーによる脱水は1枚ずつで、薄いものしかできませんでした。昭和35年(1960)には遠心力を使って何枚も脱水ができる脱水槽を持つ二槽式の洗濯機が登場しました。そして昭和43年(1968)に、洗い・すすぎ・脱水すべてを自動で行う全自動洗濯機が発売されました。洗濯にかかる労力は、洗濯機の登場と発展により、格段に少なくなりました。

 このように、ここでは洗濯や冷蔵庫、照明など、衣食住それぞれのテーマで、電化製品が暮らしに使われる前と後の道具を比べ、人々の生活がどう変わったか見ていきます。

洗濯槽と脱水槽に分かれた二槽式洗濯機

二槽式洗濯機 昭和後期 個人蔵