展示

常設展テーマ10 近世尾張の文化

下郷善右衛門家の書画

令和5年4月26日(水曜)から6月25日(日曜)

 下郷善右衛門家(しもざとぜんえもんけ)は、東海道鳴海宿(現緑区鳴海町)の名家である下郷家の分家にあたります。下郷一門のなかで笹印(ささじるし)と呼ばれた善右衛門家は、本家4世・下郷亀世(1688年から1764年)の四女に婿入りした善右衛門(1721年から1789年)を初代としてはじまりました。代々善右衛門を名乗り近代以降も勢家として続いていきます。鳴海の下郷家は、酒造を主な生業とする豪商であるとともに、惣年寄として鳴海村および鳴海宿の役人を統括し、宿村を主導する存在でもありました。加えて松尾芭蕉(1644年から1694年)を鳴海に招き俳諧を学ぶなど、文化史にも輝かしい足跡を残しています。数多く立家された分家は、同じく酒造を営みながら宿村の経営に携わりました。
 令和2年度、名古屋市博物館では善右衛門家伝来の文書や書画の寄贈を受けました。本展では、日記や肖像画を展示することで善右衛門家の概要を示しつつ、同家のコレクションを中心に江戸時代から続く豪商の文化的営みの一端を紹介いたします。

裃を着て刀を脇に差し着座した男性が描かれる

森高雅 筆 下郷善右衛門従祐肖像 館蔵

横長の和紙の束に文字が記される

天保11年下郷善右衛門日記残欠 館蔵

一人の文人が甕から柄杓を用いて庭に水をやっている

天龍老人 筆 灌園便図(『十便十宜図』の内) 館蔵

一枚は墨で蓮の花と蛙が、もう一枚は柿など果物が描かれる。

山中信天翁 筆 『雑画帖』 館蔵