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石器に使われた石

  • 平成28年5月17日(火)~6月26日(日)

 金属を知る前、人々は道具の材料として石を使っていました。どんな石でもよかったわけではなく、用途ごとに適した石が使われていました。とくに「切る」「けずる」といった用途には、刃物の刃のように鋭く割れて、じょうぶな石が選ばれていました。

 よく知られているのが黒曜石で、北海道や中部高地がよく知られていますが、日本全国で200か所ほどの産地があります。【写真①②】

①1北海道の黒曜石(北海道・白滝遺跡)

①北海道の黒曜石(北海道・白滝遺跡)

②中部高地の黒曜石(長野県・男女倉遺跡)

②中部高地の黒曜石(長野県・男女倉遺跡)

 また近畿地方・瀬戸内海地方ではサヌカイトという石がよく使われています【写真③】。サヌカイトによく似た下呂石【写真④】が岐阜県を中心に使われ、縄文時代の中ごろ以降になると、東海地方全体に広がっていきます。

③サヌカイト(奈良県・二上山遺跡)

③サヌカイト(奈良県・二上山遺跡)

④下呂石(石器は長野県・柳又遺跡)

④下呂石(石器は長野県・柳又遺跡)

 旧石器時代から縄文時代を通じて東海地方ではチャートという石が好んで使われています【写真⑤】。

⑤チャート(石器は長野県・柳又遺跡)

⑤チャート(石器は長野県・柳又遺跡))

 愛知県内に注目すると、尾張地方と西三河地方では、旧石器時代から縄文時代にはほとんどの石器がチャートで作られています【写真⑥⑦】。

⑥チャート(春日井市・上八田遺跡/個人蔵)

⑥チャート(春日井市・上八田遺跡/個人蔵)

⑦チャート(犬山市・入鹿池遺跡群/個人蔵)

⑦チャート(犬山市・入鹿池遺跡群/個人蔵)

ところが、東三河地方の石器をみると、白くてやわらかそうな石がとても多く使われています【写真⑧⑨⑩】。

⑧白い石(豊川市・日吉遺跡/個人蔵)

⑧白い石(豊川市・日吉遺跡/個人蔵)

⑨白い石(新城市・萩平遺跡/新城市教育委員会)

⑨白い石(新城市・萩平遺跡/新城市教育委員会)

⑩白い石(豊川市・鑓水遺跡/個人蔵)

⑩白い石(豊川市・鑓水遺跡/個人蔵)

この白い石はもとから白かったわけではなく、風化して白くやわらかそうな外観になってしまったのです。新しく割れた部分の内側には、濃い色が見えます【写真⑪⑫】。

⑪白い石の割れ口(豊川市・鑓水遺跡/個人蔵)

⑪白い石の割れ口(豊川市・鑓水遺跡/個人蔵)

⑫石材標本/白い石の断面(新城市・萩平遺跡)

⑫石材標本/白い石の断面(新城市・萩平遺跡)

これら白い石は、流紋岩、頁岩、溶結凝灰岩などいくつかの種類の石が風化したものです。もともとは硬く鋭く割れる石だったのです【写真⑬】。

⑬石材標本/溶結凝灰岩など

⑬石材標本/溶結凝灰岩など

 今回の「石器に使われた石」では、黒曜石やサヌカイトなど全国的に使われた石、チャートや白く風化する石のように地域的に使われた石、そしてそれらの石で作られた石器をご覧いただきます。