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小栗鉄次郎、古墳へのまなざし

  • 3月1日(水)~3月26日(日)
           

 小栗鉄次郎 (1881-1968)は、主に西加茂郡の小学校で教師として勤務した後、46歳から愛知県史跡名勝天然紀念物調査会主事として愛知県内の多くの遺跡・文化財の調査を行いました。戦中には国宝の名古屋城障壁画などの疎開に尽力するなど、昭和前期の愛知県の考古学・文化財保護に大きな足跡を残した人物です。

 小栗が収集したコレクションは、名古屋市・愛知県内の遺跡や歴史を語るうえで欠かせない資料群となっています。今回は小栗コレクションの中から古墳に関わる資料を紹介することで、小栗が関わった尾張と三河の古墳と小栗の文化財保護への活動を紹介します。

          

三河の古墳と小栗鉄次郎

 小栗は23歳で教師となり教育活動に邁進しました。その傍ら、考古学に興味を持ち、地域の歴史を知るために地元の遺跡を多く踏査し、また、地域の人々が持っていた文化財についても丹念に調査しました。その記録や出土物は、現在不明となってしまった古墳に関わるものも多くあり、貴重な資料となっています。

愛知県史跡名勝天然記念物調査会

 昭和2年(1927)、46歳で愛知県史跡名勝天然紀念物調査会主事となった小栗は、県内の文化財の調査に数多く関わることになりました。特に古墳は、陵墓との関連からも注目され、愛知県内の代表的な前方後円墳や横穴式石室の現状を記録し、土木工事で破壊された古墳の調査を行いました。

尾張の古墳と小栗鉄次郎

 小栗は、三河で採集した埴輪片と尾張の埴輪を比較するために36歳の時に熱田区断夫山古墳を訪れるなど、名古屋の遺跡も積極的に踏査しました。また、愛知県史跡名勝天然紀念物調査会主査となってからは、八幡山古墳などの国史跡指定にも尽力し、尾張の古墳の記録や保護に取り組みました。特に名古屋市内では土地開発が進行したため、多くの古墳が失われつつありました。こうした古墳の大きさや形の現状を記録し、出土物の拓本、写真などをまとめました。これらの記録から、現在でも古墳の年代や内容を知ることができるのです。

資料の収集

 小栗は、地域の文化財を守るため、また、研究の参考として数多くの考古資料や関連する記録、写真、絵葉書、新聞記事などを収集しました。小栗自身は文化財全般に情熱を注ぎ、古墳にこだわったわけではないのですが、古墳に関わる資料だけでも膨大にあり、この地域の古墳を知る上で欠かせないものとなっています。

勾玉 豊川市上長山上新屋古墳出土<br>古墳時代後期 館蔵(小栗コレクション)

勾玉 豊川市上長山上新屋古墳出土
古墳時代後期 館蔵(小栗コレクション)

『西加茂郡考古図譜(写)』のうち「伊保堂古墳発見」小栗鉄次郎 昭和 館蔵(小栗コレクション)

『西加茂郡考古図譜(写)』
のうち「伊保堂古墳発見」
小栗鉄次郎 昭和
館蔵(小栗コレクション)

重要美術品 鳥形鈕蓋付脚付短頸壺 瑞穂区師長町出土 古墳時代後期 館蔵(小栗コレクション)

重要美術品
鳥形鈕蓋付脚付短頸壺
瑞穂区師長町出土 古墳時代
後期 館蔵(小栗コレクション)