展示

常設展テーマ10

古筆 名古屋が誇る名品
Ancient Calligraphy

  • 平成29年5月24日(水)~6月25日(日)

“古筆”とは、古人の筆跡のことを指します。今回は、平安時代から鎌倉時代にかけて書かれた優れた筆跡に見える仮名の書きぶりの変遷を中心に紹介していきます。
 寛平4年(894)に遣唐使が停止されると、日本独特の優雅さを備えた「国風文化」が隆盛し、和歌文学が発達します。同時に和歌の書写に用いる仮名も美しく洗練され、紫式部も『源氏物語』のなかで「仮名のみなん、今の世は、いと、際なく、かしこくなりにたる」(梅枝)と、讃えるほどのものになりました。
「関戸本和漢朗詠集切」(写真①)に見える、流れるような連綿や、墨のコントラストの美しさは、この時代の書に共通している特徴です。
 平安後期になると、平安中期頃の書に見られる優美さに加え、線の強弱や、紙面上の空間を意識した個性的な書きぶりが登場します。「日野切」(写真②)は、筆者藤原俊成の個性が発揮されており、力強い鋭い線が印象的です。また、『三宝絵』(写真③)のように文字を書く料紙も美しく装飾されたものが作られるようになり、仮名の美しさは頂点を極めました。
 鎌倉時代に移ると、平安時代の書風を大切にしながらも、力強い書風が流行していきます。また、造形的な美しさを追い求めることだけではなく、誰もが同じように書くことが出来るよう形式的な姿に整理されたような書きぶりも目立ち始めます。
 筆跡の変化を時代の流れと共に感じながら、どうぞごゆっくりお楽しみください。

源兼行筆 関戸本和漢朗詠集切「水」 平安時代中期 (個人蔵)

   写真①
源兼行筆 関戸本和漢朗詠集切「水」
   平安時代中期 (個人蔵)

重要美術品 藤原俊成筆 日野切千載和歌集断簡 平安時代後期 (館蔵)

 写真②
重要美術品 藤原俊成筆
 日野切千載和歌集断簡
 平安時代後期 (館蔵)

重要文化財 『三宝絵』  平安時代後期 (館蔵)

 写真③ 重要文化財 『三宝絵』
 平安時代後期 (館蔵)