展示

常設展フリールーム

新発見!館蔵考古資料展

令和3年10月27日(水曜)から12月19日(日曜)

考古資料の収集

 現代の日本では、土地の開発にともなう発掘調査が数多くおこなわれ、様々な発見が得られています。しかし、名古屋市博物館が所蔵する考古資料は、こうした近年の発掘調査で出土したものではありません。行政による発掘調査が整う1970年代以前、研究者や郷土史家らが地域の歴史を明らかにするために遺跡を調査し、資料を採集しました。これらの成果は地域の歴史を語る際に欠かせないもので、名古屋市博物館は、こうした人々が残した資料を、収集、保管、公開することを目的の1つとしています。
 これらの資料の中には、知られていなかった遺跡の発見につながったもの、この地域の歴史を知るために欠かせないもの、さらには日本の歴史や文化を知るうえで重要なものが多くあり、歴史の「証拠」となっています。そして、現在も様々な人によって研究されることで新しい視点で資料が再評価されることもあります。
 こうした考古資料から、近年寄贈されたものを中心に紹介します。

鹿の絵が線で描かれた壺

鹿が描かれた壺 古墳時代

口が広がった灰色の土器

広口瓶 平安時代

高蔵1号墳(たかくら1ごうふん)

 高蔵1 号墳は熱田区の高座結御子神社(たかくらむすびみこじんじゃ)境内にあった直径18mの円墳。古墳および横穴式石室は昭和29 年(1954)に名古屋大学によって発掘調査されたのち消滅しました。全長約10mの横穴式石室は、川原石が積み上げられ造られていました。このような石室は、木曽川中流域(一宮市や可児市など)に多くあり、関係があったことが想定されます。多くの副葬品が出土し、7世紀の尾張の基準的な古墳となっています。これらの資料は、市民に広く公開するため名古屋大学考古学研究室から寄贈され、令和2年度に鉄器類を保存修理しました。その結果、鉄刀の柄に銀線による装飾がされていることがわかりました。

銀で装飾された鉄刀の柄

銀で装飾された鉄刀の柄(部分)

鉄刀のX線写真

鉄刀のX線写真

西志賀遺跡(にししがいせき)

 西志賀遺跡は、名古屋市西区から北区に位置する弥生時代を代表する遺跡として古くから知られています。昭和初期には郷土史家である小栗鉄次郎や吉田富夫らによって調査され、弥生時代前期の遺跡として全国的に知られるようになりました。そのため、幾度も全国の考古学者や研究機関によって調査され、昭和23年(1948)には名古屋大学による調査が行われました。これらの成果は、この地域の弥生時代の土器編年の基準となりました。重要な遺跡を市民に伝えるため、令和3年(2021) に名古屋大学考古学研究室から寄贈されました。