展示

常設展フリールーム

伊勢湾奥部の自然環境とくらし

  • 会期:平成29年4月26日(水)~6月25日(日)

 知多半島と志摩半島に囲まれた伊勢湾は、日本有数の内湾として知られています。地形的には遠浅の海であり、ほとんどが砂地か泥地という特徴があります。現在では、河川の改修や海の埋め立てによって、景観やくらしの様子は変わっていますが、かつては木曽三川をはじめ様々な河川が流れ込む湾奥部には干潟のような場所も多く、様々な魚介が生息していました。

 今回のフリールームでは、海中の地形、魚介の種類や地質などの環境、それらに応じて展開された漁業に注目して、関連する資料を紹介します。また、川魚を捕るために使われた筌(うけ)、低湿地帯で使われた田舟など、伊勢湾に注ぐ河川付近の生活に関する資料も紹介します。

海中の地理

 伊勢湾が遠浅の海といっても、平坦な海底が続くというわけではありません。たとえば、海に入ってしばらくすると急に水深が深くなる場所があります。そのような場所は「だん」「だんなり」と呼ばれ、多くの魚がいる場所といわれていました。また、「川先」と呼ばれる河口付近には土砂が堆積して、島のように周りから高くなっている場所がありました。このような浅瀬は「たか」と呼ばれ、貝類が生息する場所でした。

 江戸時代に作成された熱田渡海路之図には、そのような海中の情報が記されています。地上の川の延長上に、海中にも川の流れがあることが描かれ、「中ダン」「ウラナミダカ」など海中の地名、「チンメ」「ハマクリセ」など貝の名称や生息地についても記されています。

熱田渡海路之図

熱田渡海路之図

伊勢湾奥部の生業

 海中の地形や地質によって生息する魚介が異なるので、漁具や漁法を変えて、環境に応じた生業が展開されました。

 湾奥部は水深が浅く、河川から流れ込む水(あまみず)が栄養を運び、それが海水(しおみず)と混ざる場所でした。海苔養殖や貝類の生育に適しており、浅瀬では人が海に入って貝をとりました。また、より深い場所では船を使って貝をとることもありました。ハマグリマンガもそのような漁具の一つです。鉄の爪で海底のハマグリをかき上げ、網の部分で砂や泥の中からハマグリを漉しとる仕組みになっています。

ハマグリマンガ

ハマグリマンガ