展示

常設展テーマ10

海を渡った日本の蒔絵 輸出漆器

  • 平成26年8月19日(火)~9月15日(月・祝)

 天文18年(1549)、イエズス会創立者の一人フランシスコ・ザビエルにより、日本でのキリスト教の布教が開始されました。この頃日本にやってきた西洋人は、初めてみる日本人の生活や見慣れない日本の道具に目を見張ったことと思われます。なかでも、他の国に例のない黒い漆に金粉で模様を描く蒔絵の世界に魅了されました。十分に交易品となりうると思った西洋人たちは、自国の生活用具に、蒔絵や磨いた貝殻を埋め込んで文様とする螺鈿の装飾を施した漆器を注文し、大量に西洋に送り出しました。これを輸出漆器と呼びます。輸出漆器は、西洋人が日用に使う生活道具に日本風の文様を蒔絵や螺鈿で表したものと、キリスト教の儀式等に使われるための宗教用具とに大別されます。

 また、大量に制作して輸出するために、蒔絵は中世に完成した複雑な高蒔絵ではなく、当時流行していた、もっとも簡便な平蒔絵の技法が用いられました。螺鈿も中世の螺鈿のように正確に文様の形に切り抜いてはめ込むのではなく、大まかに散らしておいて、平蒔絵で輪郭線を描き形を整えて完成させる、大量生産にかなった手法が考案されました。

 こうした輸出漆器が作られたのは、桃山時代のごく限られた期間だけでした。西洋と日本が始めて出会い、作り上げた新しい文化の一瞬の輝きを紹介します。

かじゅちょうじゅうまきえらでんひつ

かじゅちょうじゅうまきえらでんひつ
花樹鳥獣蒔絵螺鈿櫃
桃山時代 館蔵

かじゅちょうじゅうまきえらでんたんす

かじゅちょうじゅうまきえらでんたんす
花樹鳥獣蒔絵螺鈿箪笥
桃山時代 館蔵