展示

常設展フリールーム

昭和天皇の即位御大典

平成31年3月27日(水曜)~令和元年5月12日(日曜)

 天皇の崩御によることなく、退位→新天皇・新元号のスタート、とあらかじめ計画されるのは、江戸時代の文化14年(1817)以来約200年ぶりのことです。御大典の中心儀式である即位礼は昭和3年(1928)11月10日、京都御所で行われましたが、天皇は汽車による東京-京都の往復路いずれの時も、神器と共に途中下車、名古屋離宮(名古屋城)で一泊しました。そのため名古屋市街に神器と天皇・皇后の行列が出現しました。この、他の地方にはない特殊な事情があったため、名古屋には即位式当日だけでなく、前後3週間にわたって熱い祝賀ムードにあふれました。祝賀行事を中心に、絵葉書などで当時の雰囲気の一端をご紹介します。

名古屋市民と昭和の御大典

 大正15年(1926)12月25日大正天皇が崩御すると、皇太子ひろひと裕仁親王は直ちに天皇の位を受け継いで(せんそ践祚と呼びます)、元号を「昭和」と改めました(改元)。平成の始まりの際もそうでしたが、昭和という元号も新天皇も、大正天皇の闘病生活・ほうぎょ崩御(大正15年12月25日)・りょうあん諒闇(喪中。ほぼ1年間)という陰うつな雰囲気の中で始まりました。天皇の死と新天皇の誕生とが一体であったため、新しい「御代」を祝おうにもなかなか祝いづらい中でのスタートでした。 こうした事情や世情不安などもあって、やがて先帝の喪の明けた昭和3年(1928)に挙行された即位礼(ごたいれい御大礼)を始めとする一連の儀式(ごたいてん御大典と呼ばれました)は、暗い雰囲気一切を吹き飛ばすかのような国家の慶事となりました。

  11月10日、新天皇は国内外に向けて即位したことを宣言・披露し、国民がこれを奉祝する即位礼を京都御所で行いました。午後3時ちょうど、京都御所ししんでん紫宸殿の天皇の前で内閣総理大臣田中義一が発する万歳三唱に合わせ、日本中で一斉に何千万もの万歳がこだましました。そのため、当時の国民の感覚的にはこの日をもって新時代昭和の幕開けとなったのです。

  11月6日東京の「きゅうじょう宮城(皇居の当時の呼び名)」を京都に向け出発した昭和天皇は、長距離の汽車による旅でもあり、往路・復路ともに名古屋駅で途中下車し、名古屋離宮(名古屋城本丸御殿)に一泊しました。そのため、名古屋駅と名古屋離宮との間を、神器の鏡(皇位のしるし)と天皇・皇后が2往復する必要が生じ、11月6・7日と25・26日の計4回、即位礼が行われる京都市街さながらの厳粛な大行列が名古屋中心部を行進することになりました。

御大典奉祝名古屋博覧会

  昭和3年(1928)秋、天皇即位の奉祝事業として開催された御大典奉祝名古屋博覧会は、実質的な内容としては、当時不振だった名古屋の産業の振興を図ることが主目的の大見本市でした。名古屋で最大の記念事業として博覧会が選ばれたのは、前年に名古屋周辺で行われた名古屋陸軍特別大演習をするため昭和天皇が来名した時の出来事がきっかけでした。演習終了後、国産品の振興に関心が深かった天皇は地元工場を親しく訪問・視察するなどしました。このことに感激した名古屋の産業界が、「報恩」の意味も込めて、産業博覧会を奉祝事業として開催することにしたのです。 会期は当初9月15日から11月23日まで70日間の予定でしたが、開会前に一週間延長を決定しました。おそらくは天皇が名古屋を離れ東京に向かう26日を前に奉祝事業が終了するのを避けたのでしょう。

  博覧会総裁には名古屋第三師団での連隊長経験がある皇族(王。皇后の従兄弟)を迎え、副総裁は愛知県知事(小幡豊治)と名古屋商工会議所会頭(伊藤次郎左衞門)の両氏でした。また実質的な開催責任者である会長は、名古屋勧業協会長でもあった名古屋市長(大岩勇夫)が務めました。会場は、過去何度も大博覧会が開催された鶴舞公園です。この時は特に、全国からの来場者が便利なようにと、公園に隣接して走る中央線に臨時駅「鶴舞公園駅」が設けられました。結果、東海地方を中心に全国から200万人弱が観覧に訪れる盛況となりました。ちなみにこの臨時駅は博覧会終了後いったん廃止されましたが、その後地元の熱望により復活、現在のJR鶴舞駅へとつながっています。

※展示資料は全て昭和3年(1928)の物で、館所蔵です。

絵葉書、昭和天皇と皇后

「絵葉書」即位礼当時の若き昭和天皇・香淳皇后夫妻

絵葉書、名古屋市民の様子

「絵葉書」神器と天皇夫妻の行列を待ち受ける名古屋市民

絵葉書、神器が名古屋城に到着した様子

「絵葉書」神器を載せた御羽車が離宮(名古屋城)に到着

絵葉書、馬車と兵士

「絵葉書」昭和天皇を載せた御召馬車と馬上の近衛士官

絵葉書、航空写真による博覧会場

「絵葉書」当時珍しかった航空写真による博覧会場全景

名古屋城などのイラスト

「絵葉書」博覧会を広報するポスターと同じ絵柄のもの

絵葉書、博覧会の正門、切手、消印、スタンプ付き

「絵葉書」正門の様子と、記念切手・消印・スタンプ

絵葉書、博覧会本館

「絵葉書」主要な陳列場のひとつ、巨大な博覧会本館