中近世の石造物
令和元年5月14日(火曜)~6月23日(日曜)
中世以降、人々は神仏への信仰や故人の供養のために、さまざまな形の石造物を創出しました。その多くが数百年経った今もなお、地域の各所にひっそりと佇んでいます。後世にまで人々に伝えることができるとはいえ、堅く重い石を加工・整形・彫刻し、文字を刻むことは容易ではありませんでした。1点1点に造られた背景があり、当時を生きた人々の思いや願いが込められています。
今回の展示では、五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)、石仏など信仰・供養に関わる石造物を中心に、その特徴と魅力を紹介します。
石は堅く重いため動かしにくく、紙や木よりも朽ちにくいといった性質があります。古代から石には力が宿るとされ、まじないや魔除けの道具、あるいは、神の依り代となりました。
やがて仏教が伝来すると、極楽往生や現世安穏の功徳を得ようと、石製の仏舎利を安置する仏塔(ストゥーパ、卒塔婆)や仏像が造られました。また、先祖・故人の追善供養と結びつき、墓石・供養塔としても用いられました。仏教の影響によって宝篋印塔(ほうきょういんとう)や五輪塔(ごりんとう)などさまざまな形が成立し、庶民にまで浸透する中でさらに多様化していきます。民間信仰と結びついた庚申塔(こうしんとう)や月待碑(つきまちひ)なども広がり、記念碑や特定の人物の顕彰碑、歌碑や句碑も造られました。
石造物の形や刻む文字に人々の願いや祈り、思いが託されました。
五輪塔・一石五輪塔・宝篋印塔 全て館蔵
石造物の多くは、寺社や地域の一角で大切に保存され、今なお人々の信仰を集めるものもあります。一方で、元々の意味が忘れられ、土地開発による移動や転用、または地中に埋もれたものや行方不明となったものもあります。また、風雨に晒され続けることで風化・劣化してしまいます。
石造物は、それぞれ長い時間と社会の変化の影響を受けながら現在へと伝わってきています。市内に伝わる身近な石造物の一部をご紹介します。
瑞穂通4丁目古墓から出土した宝篋印塔 館蔵