企画展 採録 名古屋の衣生活 伝えたい記憶 残したい心
名古屋の“衣”にまつわる いろいろ記録しました
現在、私たちが着る衣類は日本各地の店で同じものが売られ、地域的特徴がなくなってきています。この展覧会では、昔のくらしの中の衣に注目して、地域に残る着物や道具に込められた記憶・歴史を、その時代をくらしてきた人々の心にも触れつつ、探っていきます。展示資料の多くは、名古屋に住む方々から御寄贈いただいたものです。また、地域の方々のインタビューや、今ではあまり行なわなくなった機織りなどの技も紹介します。名古屋という地域で集めたモノや人々の話を通して、名古屋の衣生活の移り変わりを見ていきましょう。
どのようなものを着ていたか、その時と場面に注目し、冠婚葬祭などの特別な日(ハレの日)と普段の生活の衣服を紹介します。“晴着”という言葉があるように、特別な日には特別な衣装を身にまといました。そうした晴着は自分自身が社会の中でどのような立場であるかを認識し、それを社会に認めてもらう意味もありました。一方で普段に着る衣服は生活に即したものですが、その中でも時と場合で着分けていました。
わたしたちの人生には大きな変化となる節目がいくつもあります。その節目のうち、誕生・成人・結婚・葬送という4つに注目し、そのときに着る衣服を紹介します。
収集地:南区赤坪町 明治34~35年新調 館蔵
熨斗(のし)などめでたい模様に金糸や色糸の刺繍がほどこされた婚礼衣装。明治16年生まれの女性が明治34、5年ごろに嫁いだときのもの。
日常生活で着る衣服は、家の中で着るツネギ(ツネとも)、ちょっとした外出のときに着るチョコチョコギ(チョコチョコとも)、改まった席に出るときに着るヨソイキという3つの段階で衣服を着分けていました。
収集地:天白区中平 昭和後期 館蔵
着物が汚れないようにするため着物の上に上っ張りを羽織る。
この上っ張りを着たときは着物が隠れるので、帯を締めずに紐で済ませることもあったという。
どのようなものを着ていたか?今度は地域に注目して紹介します。町では百貨店が提案した衣装の流行についてやお寺の縁日の定点観測について、村では農業と漁業という生業に合わせて作られた仕事着について紹介します。
昭和初期ごろ、百貨店はそれぞれで流行となる色や模様を考えて発信していました。ここでは松坂屋が提案した流行色や模様をパンフレットから紹介します。また衣風俗研究家の岡本靖子さんが、縁日に参拝に来るおばあさんを昭和52年(1977)~平成11年(1999)年の間、定点観測した成果を紹介します。
昭和7年 一般財団法人 J.フロントリテイリング史料館蔵
松坂屋がその年の流行を提案したパンフレット。昭和7年はロサンゼルスオリンピックの年で、そのとき提案した模様のひとつはスポーツ趣味だった。
岡本靖子氏作画
昭和52~53年にかけて、覚王山日泰寺(名古屋市千種区)の縁日に来るおばあさんをスケッチしたもの。
仕事着は気候や環境、労働に応じて動きやすいように、家の女性たちが作っていました。また、既製品や洋服を着るようになっても、作業しやすいように袖を短くするなど工夫が見られました。ここでは、名古屋市内の農作業や漁業に携わる人々が着ていた仕事着を紹介します。
収集地:中川区下之一色町 昭和 館蔵
漁師が漁に出て水仕事をするときや雨が降ったときに着る上着。水や風を通さないように、何枚も生地を重ねて、刺し子にしている。
着物は、昔は自分たちで織り、布を切って仕立て作られていました。その作業はいくつもの段階を経る時間のかかるものでしたが、自分の都合の良いように作ることができ、そこには工夫や知恵が盛り込まれています。ここでは、機織りや裁縫を通して、今では見られなくなった技を紹介します。
自分たちの手で織っていた機織りの様子を紹介します。糸から布にするまでのそれぞれの段階を記録するとともに、そこにある知恵や工夫にも注目します。また愛知県周辺で盛んに行なわれていた「結び糸」も紹介します。
機(はた)…収集地:緑区大高町 大正~昭和 館蔵
会場では、糸を用意して機に設置する作業から、機織りするまでの様子を展示。
収集地:昭和区広路町 昭和後期 館蔵
結び糸は機織りで出る残糸。利用者は呉服屋で結び糸を買い、結んで長い糸にし、再び呉服屋で反物に織って染色し、着物に仕立ててもらう。
着物を仕立てることは女性の仕事とされていました。嫁入り道具に裁縫道具が必ず用意されていたことからも、その技術が必要とされていたことがわかります。裁縫するために必要な道具や、着物など衣服を仕立てるために作られた雛形について紹介します。
収集地:昭和区曙町、南区観音町 昭和 館蔵
まっすぐに裁ち、まっすぐに縫うことの多い着物には、それに適した道具が使われた。
現金を得るために行なうようになった衣に関する仕事を取り上げて、くらしの変化を見ていきます。明治に入り輸出用の生糸のために盛んになった養蚕と、有松・鳴海を中心に現在でもくくり仕事が行なわれている有松・鳴海絞りを紹介します。
名古屋市内では昭和39年ごろまで養蚕が行なわれていました。養蚕で使っていた道具類や、蚕が繭になるまでの姿など、養蚕の仕事とそれに関わっていた人々のくらしについて紹介します。
収集地:北区楠町、守山区小幡中・幸心、豊田市苅萱町 明治~昭和前期 館蔵
部屋の畳をはずして棚を置き、そこで蚕の飼育を行なっていた。たくさんの蚕がエサである桑の葉を食べると、「ざあざあ…」という音がして雨が降っているようだったという。
現在伝統工芸品として名高い有松・鳴海絞り。100種をこえるといわれた絞りの内、鹿の子絞りや三浦絞りなどのくくり仕事は、有松・鳴海近辺の女性たちが内職として行なっています。女性たちがくくり仕事をどのように行なってきたか、くらしを交えて紹介します。
収集地:南区本星崎町 昭和 館蔵
鹿子絞り用の絞り台。絞りによってさまざまな針の形がある。絞りのくくり仕事は、小学生のころから家族がやっているのを見て覚えてやり始めるのだという。
一般 | 高大生 | 中学生以下 | 市内在住の65歳以上 |
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300(400)円 | 200(300)円 | 無料 | 100(200)円 |
*( )内は常設展「尾張の歴史」との共通料金。
*名古屋市交通局の一日乗車券・ドニチエコきっぷを利用してご来館の方は50円引き。
*身体等に障害のある方または難病患者の方は、手帳または受給者証のご提示により本人と介護者2名まで無料。
*各種割引は重複してご利用いただくことはできません。ご了承ください。
*30名以上の団体は割引がありますので、お問い合わせください。
会 期 | 2017年2月11日(土)~3月26日(日) |
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休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)・第4火曜日 2/13、20、27、28、3/6、13、21 |
開館時間 | 9時30分~17時(入場は16時30分まで) |
会 場 | 名古屋市博物館 (名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1 地下鉄桜通線桜山駅下車徒歩5分) |
主 催 | 名古屋市博物館 |
関連事業はすべて展示会場内で開催します(当日有効の観覧券が必要)。
参加をご希望の方は、当日の開始時間までに展示会場入口にお集まりください。
2017年3月18日(土)14時~14時45分 定員30名
講師 当館学芸員
2017年2月26日(日)、3月15日(水)、26日(日) 14時~14時30分
講師 当館学芸員
糸がどうやって布になるか、順番に見ていきましょう。
◎鶴舞中央図書館×企画展「採録 名古屋の衣生活」コラボレーション企画
お問い合わせ:鶴舞中央図書館 奉仕課奉仕第二係(電話052-741-9822 FAX052-733-6337)
2017年2月25日(土) 14時~15時 事前応募にて先着50名
鶴舞中央図書館1階 第一集会室
◇図書館司書による展覧会関連図書の紹介(ブックトーク)と、博物館学芸員による展覧会の話。
応募方法:1月27日(金)9時30分から鶴舞中央図書館2階カウンター、または10時から電話(052-741-9822)にて。
2017年1月21日(土)~ 3月16日(木)
鶴舞中央図書館 2階展示コーナー
尾張の国学者・河村秀根(かわむらひでね)らの蔵書「河村文庫」の有職故実のコレクションから、衣服に関わるものを展示。
2017年2月11日(土)~ 3月26日(日)
名古屋市博物館1階ロビー
衣服をテーマに、図書館司書おすすめの本を展示、紹介します。