過去の展覧会の紹介
会期:平成23年(2011)10月22日(土)~12月4日(日) 開館時間:午前9時30分~午後5時(展示室への入場は午後4時30分まで) 休館日:10/24(月)・10/25(火)・10/31(月)、 11/7(月)・11/14(月)・11/21(月)・11/22(火)・11/28(月)
観覧料
当日 | 前売 | 団体(20名以上) | |
---|---|---|---|
一般 | 1000円 | 800円 | 800円 |
高大生 | 600円 | 400円 | 400円 |
小中生 | 200円 | 100円 | 100円 |
※前売券の発売は開催前日の10月21日まで。
■前売券(10月21日まで販売)は主要プレイガイド、中日新聞販売店、チケットぴあ(Pコード764-769)および提携コンビニなどでお求めいただけます。
*店舗により、発券手数料の必要な販売所があります。事前にご確認ください。
■狂言でござる展と名古屋市美術館・名古屋ボストン美術館で相互割引があります。
狂言とは室町時代に成立した楽しい対話劇です。「芸所」名古屋と数百年の歴史を持つ伝統芸能「狂言」には密接な関係があります。
名古屋の狂言は、江戸時代には多くの人々に親しまれ、明治以降は和泉流門下の人々が結成した「狂言共同社」を中心に守り伝えられてきました。
現在、名古屋の狂言を伝える狂言共同社は平成22年に結成120周年をむかえました。これを記念した今回の展覧会では、狂言共同社の所蔵資料を一堂に展示します。
登場するキャラクターや演目の内容など狂言の魅力的な世界を紹介し、江戸時代からはじまる尾張の狂言の歴史について分かりやすくお伝えします。
「靫猿(うつぼざる)」 狂言共同社公演 杉浦賢次氏撮影
400年以上前から伝わる狂言は、室町時代から江戸時代にかけてのことばが使われ、当時の風習や生活文化を垣間見ることができるタイムカプセルのような芸能です。
狂言で取りあげられる題材は庶民の日常生活がほとんどです。登場人物はどこにでもいる人々、太郎冠者(たろうかじゃ)と主人、情けない夫と気の強い妻、市に出かけた田舎者と詐欺師(さぎし)、こうした様々な人間関係が作る日常生活の中で狂言の物語は展開します。
また、恐ろしいはずの鬼が気弱な姿を見せたり、大名が蚊の精と相撲をとったり、人間に化けた狐が猟師のもとにやって来たりと、不思議なものと出会う演目も多くあります。
数百年前の人々が好み、空想した物語世界、まるで和風ファンタジーの世界に足を踏み入れたような楽しさがあります。
狐の面(おもて)ともんぱ
狂言共同社蔵 江戸時代
「釣狐(つりぎつね)」の狐に使用される面と着ぐるみ。
狂言面 うそ吹
狂言共同社蔵 江戸時代
蚊の精をはじめ動植物など人間以外の役に使用されることが多い。
狂言面 小武悪(こぶあく)
狂言共同社蔵 江戸時代
鬼の役に使用される。子ども用の小さい武悪面。
名古屋は東京や京都と並び、国内でも有数の狂言が盛んな地域です。そのはじまりは、江戸時代までさかのぼります。
尾張藩では初代藩主である徳川義直の代から能楽の充実がはかられます。大蔵流(おおくらりゅう)・鷺流(さぎりゅう)という二つの大きな狂言の流派がある中で、群小諸派の一人であった山脇元宜(もとよし)が尾張藩に召し抱えられ、名古屋の狂言の礎が築かれました。
山脇元宜が樹立した流派は、宗家(そうけ)の山脇という名にちなんで、山脇流と呼ばれていました。尾張藩の庇護(ひご)のもと江戸時代を通じて、山脇流は流儀の充実をはかり、主要な流派の地位を得て、明治以降は和泉流という名称が定着します。
山脇流の狂言師は時には尾張藩から装束などを拝領することもあり、逆に面を献上することもあったと伝えられます。
拝領品を含む所蔵品は、明治維新や戦災といった苦難の時を越えて名古屋で伝えられています。
口宣案(くぜんあん)
狂言共同社蔵 寛永8年(1631)
禁裏(天皇の住まい)で「花子(はなご)」を演じた和泉流初代元宜に
和泉守への任官を伝える。
松皮菱菊模様縫箔(まつかわびしきくもようぬいはく)
狂言共同社蔵 江戸時代
尾張藩より拝領
拝領する以前に付いた整髪の油が背中上にみえる。
明治維新を迎えると、和泉流宗家(そうけ)の東京への移住などによって名古屋の狂言は存続の危機におちいります。そのような中で、明治24年(1891)に和泉流門下の弟子であった旧家や商家の主人たちが、名古屋の狂言を絶やさないようにと「狂言共同社」を結成しました。
弁護士で第一期市会議員も勤めた角淵宣(つのぶちせん)、仏具商の井上菊次郎、酒造業の河村鍵三郎、旗屋の伊勢門水(いせもんすい)などなど。このうち伊勢門水は多くの狂言画も遺した名古屋を代表する風流人でもあります。
彼らは専業の狂言師ではありませんでしたが、芸の水準は非常に高いものがあり、芸の伝承にはげむとともに宗家が手放した装束・面・台本などを買い戻して共同で管理しました。結社的に集まった人々が物心両面から宗家伝来の狂言を伝える姿は、他地域にはみられない名古屋独特のあり方といえます。
狂言画 柿山伏(かきやまぶし)(部分)
佐藤友彦氏蔵
大正13年(1924) 伊勢門水筆
大正13年、所蔵者の父、佐藤秀雄氏が
初めて柿山伏のシテ(主役)である山伏を演じた際に、
伊勢門水から贈られた。
結成120周年を迎えた現在の狂言共同社は、結成メンバーから数えて4,5世代ほど経過して、ますます活発な活動を続けています。 能楽堂や能舞台だけでなく、学校や文化施設に出向いての公演、商店街や地下鉄の駅といった意外な場所での公演も行っています。また、新作狂言や他ジャンルの芸能との共演も行っています。こうした新たな試みを行いつつ、伝統芸能としての狂言の水準を高め、狂言を未来へ伝えています。
市営地下鉄と丸八マークに百合模様肩衣(かたぎぬ)
狂言共同社蔵
平成 堀江謹之助原画
平成6年(1994)に地下鉄桜山駅で行われた駅狂言で使用。
共同社の所蔵品の中でも伝書や台本は、これまで大々的に紹介されることはありませんでした。和泉流で「六議(りくぎ)」と呼ばれる台本は、演出やせりふなど重要な情報が記され、狂言共同社の所蔵品の中で最も重要な資料です。
特に和泉流七代目山脇元業(もとなり)(1780~1849)が、先代や先々代から教えを受けた内容を書き留めた「秘伝聞書」をもとに編纂(へんさん)した「雲形本」と呼ばれる狂言六議は貴重なものです。
狂言六議は口伝であった芸の伝承を文字として記録したものであり、それまでの和泉流狂言の集大成であるとともに、江戸時代から続く狂言を現代の名古屋に伝える原点でもあります。
狂言六議(きょうげんりくぎ) 雲形本
狂言共同社蔵 江戸時代
山脇元業(やまわきもとなり)編
秘伝聞書
狂言共同社蔵 江戸時代
山脇元業筆
秘伝聞書
狂言共同社蔵 江戸時代
山脇元業筆
この展覧会では、上演写真や映像、古写真やパンフレットなどの記録を活用しながら、多数の装束・面・伝書や台本を紹介する中で、狂言の魅力的な物語世界と尾張の狂言の歴史についてお伝えします。芸術の秋、ぜひお越しください。
■狂言鑑賞入門 会場:当館講堂(定員220名・当日先着順・聴講無料)
■記念講演会 会場:当館講堂(定員220名・当日先着順・聴講無料)
■展示説明会 会場:当館講堂(定員220名・当日先着順・聴講無料)
■体験コーナー (開館時間中、特別展の会場内で体験できます)