過去の展覧会の紹介
会期:平成20年7月19日(土)~8月24日(日) 休館日:毎週月曜日(7月21日は開室)と第4火曜日(7月22日) 開館時間:午前9時30分から午後5時(展示室への入室は4時30分まで)
名古屋城下町ができてまもなく400年。本丸御殿の復元もいよいよ実施にむけて動きはじめ、さまざまな関連イベントも目白押しのようです。日本一元気といわれる名古屋で、これほどまでに江戸時代への関心がたかまっている理由は、ゼロから作られた計画都市に元気名古屋のルーツを求めようという意識かもしれません。当館でも昨年、特別展「大にぎわい城下町名古屋」を開催し大好評を博しました。今回は切り口を変え、考古学の成果から城下町を見直してみようという企画です。
実は名古屋の地では、江戸考古学はまだ四半世紀の歴史しかありません。従来の考古学の研究対象は(暗黙に)中世までとされていたためです。そのため都市化が進み、再開発のなかで、江戸時代の遺構は調査されることなく破壊され、その遺物は表土とともに捨てられてきました。縄文時代や弥生時代はさておき、江戸時代の生活は分かっているから発掘調査するまでもないということだったのでしょう。
江戸時代的な生活様式は少なくとも先の大戦頃までは色濃く残っていました。しかし名古屋のような大都会では、空襲や都市計画により住環境が変わり、電気、ガス、家電製品の普及により、旧来の生活様式は一掃されてしまいました。幕末からわずか140年ほどしか経ていないにもかかわらず、何に使われたのか、どう使ったのか分からない出土品(生活用具)の多さに唖然とさせられます。
今回の展覧会では、発掘によって出土したさまざまな生活用具を紹介するとともに、調査の積み重ねによって明らかになった地域の歴史を物語的に語ってみたいと考えています。
展示は大きく三つの主題に分かれます。前半(I・II)では発掘品を種類別にカタログのように紹介し、江戸時代の生活をわかりやすく再現します。つまり「もの」からのアプローチで、当時の人々の営みを理解するための基礎知識を得ていただく展示です。後半(III)では、博物館で行う遺跡発掘説明会というコンセプトで、写真・パネルや絵図を多用して、主要遺跡の調査成果と、この30年の江戸考古学の知見を紹介します。変化に富んだ出土品や、各種地図やパネルなどをとおして、城下町名古屋へのゆたかなイメージをふくらませていただけるものと確信しています。
展示の前半では、さまざまな生活の場で用いられた道具をその種類ごとに分類してご覧いただきます。今では全く使われていない道具、形や材質を変えながらも使われ続けているもの、ほとんど変化せずに今日に残るものなど、当時の生活を彷彿とさせる品々のバリエーションをお楽しみください。また、ひとつの道具をさまざまな用途に用いたり、破損品を転用させたりといったリサイクル・リユースの実態も見どころのひとつです。
a あかりの道具 b 酒と煙草と c あそび d 季節の楽しみ e 趣味と教養 f 化粧 g 信仰・調度
出土品の大半は碗や皿などの食器や、鍋やこんろなどの調度具など食にかかわるものです。こうした食の道具の多くがやきもので作られています。瀬戸に近接した名古屋城下町では出土陶磁器の大半が瀬戸美濃製品ですが、重臣の屋敷跡からは肥前系の高級磁器が出土しています。一方、鍋、釜、こんろなどの土製品は、常滑や三河(吉良から碧南)産が健闘している状況が分かります。
a さまざまな調理具 b 食生活の変化 c 喫茶の習慣
名古屋市が手がけた最初の「城下町遺跡」の発掘は、1982年の小鳥町遺跡の調査でした。(跡地には国際センタービルが建設されています。)それ以降今日まで、毎年のように旧城下町の発掘調査を実施してきました。 巾下水道、三の丸の街路や屋敷割り、徳川家の御霊屋跡や池泉庭園跡、都市河川や武士の墓、等々貴重な成果が上がっています。また旧城下町の域外でも上層の江戸遺構の調査が行われ、町続きの江戸期の様相が明らかになってきたのも大きな成果です。
このテーマではマニア向きの遺跡紹介ではなく、発掘調査によって明らかになった成果を物語的に分かりやすく紹介し、江戸時代のイメージをゆたかにふくらませていただくことをめざします。
a 城下町発掘のはじまり (小鳥町遺跡) b 紫川の不思議 (旧紫川遺跡) c 下級藩士と巾下水道 (幅下遺跡ほか) d 中級武士の役宅 (竪三蔵遺跡) e 重臣たちの夢の跡 (三の丸遺跡) f 埋もれた大名庭園 (三の丸遺跡御屋形庭園) g 二の丸庭園発掘物語 (二の丸庭園遺跡) h 街道筋の寺町 (尾張元興寺遺跡) i 藩士のお墓 (白川公園遺跡)
いずれも午後2時から(1時30分開場)1階展示説明室にて。当日先着100名。聴講無料
・7月20日(日) 「尾張名古屋は地下で待つ(総説)」 当館学芸員 ・7月27日(日) 「三の丸御屋形遺跡の発掘」 愛知県埋蔵文化財センター調査研究専門員 鈴木正貴氏 ・8月3日(日) 「幅下遺跡の発掘」 見晴台考古資料館学芸員 水野裕之氏 ・8月10日(日) 「近世の高級食塩」 愛知県埋蔵文化財センター調査研究専門員 松田訓氏 ・8月17日(日) 「本丸御殿の発掘」 名古屋城管理事務所学芸員 木村有作氏
7月25日(金) 白川公園遺跡 発掘中の中世から近世の遺構について、発掘を担当している名古屋市見晴台考古資料館学芸員の説明をうけます。
時間 13:30開場 14:00から現地説明(約1時間) 集合場所 白川公園・名古屋市科学館北側(中区栄2丁目)
どなたでも自由にご参加いただけます。ただし13:30以前はご遠慮ください
展覧会を見ながら、地下に埋もれた城下町名古屋の問題を解こう。
一般600(700)円・高大生400(500)円・小中生は無料
名古屋市在住の65歳以上の方は、200(200)円(要敬老手帳など)。 ( )内は2階常設展「尾張の歴史」との共通観覧料金。 30名以上の団体および名古屋市交通局発行のユリカ・一日乗車券・ドニチエコきっぷ でご来場の方は、一般・高大生100円引。 身体等に障害のある方で手帳をお持ちの方(介護者も2名まで)は観覧料金無料。