常設展これまでとこれから
令和5年8月29日(火曜)から9月30日(土曜)
常設展「尾張の歴史」は、長らく博物館の顔としてこの地域の歴史を皆さんに伝えしてきました。展示が始まったのは開館翌年の昭和53年(1978)。”初代”の常設展示はおよそ10年間でリニューアルすることになり、平成元年(1989)には”二代目”の「尾張の歴史」が始まり、現在に至ります。
今年10月1日から当館はリニューアル工事のために休館します。そのなかで、この「尾張の歴史」も大きく生まれ変わる予定です。そこで、今までの常設展の歩みを振り返り、新しい常設展の計画をお知らせします。
初代常設展「尾張の歴史」のコンセプトは、原始より現代まで時代の流れを追って常時展示するものでした。展示構成にあたっては、次の四点を基本としました。
1.資料を、個々に切り離して展示するのではなく、時代環境、社会のしくみや人間の生活、他の資料とのかかわりにおいてとらえ、それによって広い視野に立った地域社会の歴史の特色を示す。
2.歴史をささえ推進した庶民の生活を重視する。
3.わかりやすく興味をもって見ることができる展示方法をとる。
4.展示内容は調査研究に裏づけられたものとする。
さらに、単なるケース展示からおこりやすい単調さ、疲労感をやわらげるため、ジオラマ・模型・映像・音声などを使用する方法もとりいれたのです。
初代常設展鳥観図 昭和53年 館蔵
平成元年にオープンした2代目の常設展(現在の常設展)も、「尾張の歴史」を通史的に扱いますが、先代とはコンセプトが大きく異なりました。
1.「もの」の展示を重視する。復元やジオラマなどを減らし、多くの情報をパネル等で提示することをさけ、情報機器に入れる。
2.テーマや事頂の組み立てを再考し、やきものなど、この地域に特徴的な事項を重点的にとりあげる。
3.展示室内を開放的な展示空間とし見学者の興味に合わせ自由に見学できるようにする。
改修後35年が経過した現在の常設展には様々な評価があります。皆さんはどのように考えられますか?
二代目常設展検討模型 昭和63年頃 館蔵
新しい常設展では、博物館での新しい展示体験や学びを実現することを目標とします。そのために、実物資料展示の良さを継承しつつ、ストーリー性や体験・体感要素をバランス良く取り入れる予定です。
構成は、尾張地域の歴史をひもとく「通史展示」、祭礼や年中行事などの文化を紹介する「歳時記展示」、博物館の所蔵資料や研究成果などを紹介する「特集展示」からなります。
通史展示は、実物資料を中心としつつ、再現展示や触れる展示を増やすことで、これまで十分でなかった子ども、障害者、外国人など多様な人々に尾張の歴史や文化を伝えていきます。観覧者が、自由に見て、考え、自らのことに引き付けて考える動機となるような問いかけや、多様なコースをICTの活用などで実現していくことを構想しています。
新しい常設展では、多様な人々が歴史や文化に興味をもち、より深い学びを実施できるよう再現や体験を取り入れます。ただ、その根底には、やはり”本物”の文化財を展示空間で見ていただきたいという思いがあります。常設展示室内の様々な場所で、地域に伝わる貴重な文化財を適切な環境でご覧いただく予定です。
その中で今回は地域に伝わる文化財として特に重要な、真福寺文庫(大須観音)ご所蔵の国宝 古事記と重要文化財 尾張国解文を展示します。
新しい常設展でもこうした文化財が活躍することでしょう。
古事記 大須観音宝生院蔵