特別展 アンコール・ワットへのみち インドシナに咲く神々の楽園

コラム

アンコール遺跡群のいま

アンコール遺跡群は、現在では世界遺産に登録され、また年間約280万人にのぼるカンボジア観光客がほとんどといっていいほど訪れる、国際的に人気の観光地でもあります。 1860年にフランス人探検家アンリ・ムオがアンコールを「発見」した後、20世紀からはフランス極東学院によってアンコールの整備・修復と研究がおこなわれてきました。

かつてのアンコール遺跡群は、まるでジャングルのように樹木に覆われ、石造建築が大きく崩壊した荒廃ぶりでした。 樹木の根が石造建築を上から抱きかかえるように生え、その樹木に覆われる風景はかつての密林に埋もれた遺跡群の姿を彷彿とし、見る者に驚嘆とロマンの相混じった迫力を感じさせます。 しかし、その巨木の重量からくる圧力、石材の隙間に入り込む中小の根は、遺跡を破壊する要因でもあり、アンコール遺跡群の保存に深刻な影響を与えます。

  • ベン・メリア(11世紀末~12世紀初頭)
    ベン・メリア
    (11世紀末~12世紀初頭)
  • タ・プローム(12世紀末)
    タ・プローム
    (12世紀末)

アンコール遺跡群は世界遺産に登録されると同時に、同じくUNESCO(ユネスコ)の「危機にさらされている世界遺産」(通称・危機遺産)リストにも登載され、その保存修復は国際的な急務として取り組まれています。 歴史的遺産の保護と研究、そして観光資源の整備という両面において、傷みの深刻なアンコール遺跡群の修復は大きな課題であり、カンボジア王国政府のアンコール地域遺跡保護管理機構(通称・アプサラ機構)とともに、 フランスや日本など数ヶ国が修復協力に当たっています。日本チームが修復を手がけた代表的な遺跡には、バイヨン、アンコール・ワットなどがあります。

これら長年の国際的な修復と整備の努力によって、2004年にアンコール遺跡群は危機遺産リストから除外されるまでに回復し、燦々と明るい陽射しが降り注ぐ美しい現在の景観が得られるようになりました。 現在でも、日本の修復チームによる保存修復事業・現地の専門家の養成事業や、上智大学や早稲田大学などによるアンコール遺跡群の調査研究は継続的におこなわれています。

  • 交通アクセス
  • 名古屋市博物館facebookページ