展示

常設展テーマ10

没後150年記念 森高雅

  • 7月8日(火)~8月17日(日)

 森高雅(もりたかまさ)は江戸時代後期の尾張を代表する画家のひとりです。彼は寛政4年(1792)に生まれ、当初は葛飾北斎(かつしかほくさい)の門人である牧墨僊(まきぼくせん)に絵を学び、「玉僊(ぎょくせん)」の画号で風俗画や名所絵などを描きました。天保5年(1834)、土佐派の絵師への転向を表明し「高雅」と名乗るようになってからも、精力的に作画活動と門人育成を行いつつ、元治元年(1864)の5月4日に亡くなりました。特に美人画は評価が高く、たくさんの作品が残っています。

 没後150年となる今年、館蔵品を中心に森高雅の美人画をご紹介します。

 こちらの「二美人図」(館蔵)は、彼の肉筆美人画のなかでも逸品に数えられます。
 恋文にどう返答しようか、煙管(きせる)をもてあそびながら、どこか楽しげに思案している芸妓がいます。そして彼女より少し若い朋輩(ほうばい)が興味深げに手紙をのぞき込んでいます。二人の背景にある衝立(ついたて)には「玉僊写意」という署名が入っているので、彼が「玉僊」という画号を名乗っていた時期、おそらく文政期(1818-30)頃の作品でしょう。量感を持ちながらもしなやかな身体表現、二人の表情の描き分け、緻密な着物の紋様や髪の毛のほつれ具合など、細かいところにも気を配った完成度の高い一幅です。
 この特集展示では、喜多川歌麿や葛飾北斎の影響を色濃く残した初期作から、そしてさまざまな画風を摂取したあとにたどり着いた濃厚な美人画、そしてのちに「高雅」と改名したあとの典雅な風情をたたえる晩年作など、彼の作風の変化を見ることができる美人画を時代順に展示します。

二美人図

森高雅「二美人図」江戸時代 館蔵