展示

常設展テーマ10

松坂屋コレクション デザインの妙

  • 平成29年8月23日~9月24日

 呉服屋を前身とする松坂屋は、新しいデザインを作り出すために参考となる資料を集めました。これが「松坂屋コレクション」です。松坂屋は昭和6年(1931)に京都に染織参考室を設置し、染織品を中心とする工芸品を蒐集(しゅうしゅう)し始めました。その目的は、古い時代の染織品のさまざまな意匠や技巧を呉服デザインの参考にするためと、流行にとらわれずに最高の製作技術をもって昭和を代表する美術品として呉服を残すことでした。蒐集品は、江戸時代を中心とした小袖・能装束などの衣装類やその裂(きれ)、世界各地の特徴ある布地や裂、屏風や武具、調度品などの工芸品などで、およそ4,900件もの数を有しています。それらの資料は大切なデザインソースであるため、社外秘として長年保管されてきました。平成23年に名古屋に移されたのを機に、一部が名古屋市博物館に寄贈されました。
 松坂屋が参考にしたコレクションにはどんなデザインが見られるのでしょうか? 今回は、ぼう大なコレクションの一端ではありますが、デザインに注目してご紹介します。例えば、写真は江戸時代の小袖で、全体に模様が表されています。その一つ一つを見るといろいろな風景が描かれています。この風景は近江国(今の滋賀県)の代表的な名所をあらわしたものです。これを「近江八景」といい、具体的には「比良(ひら)の暮雪(ぼせつ)」、「堅田(かたた)の落雁(らくがん)」、「石山の秋月」、「粟津(あわづ)の晴嵐(せいらん)」、「瀬田の夕照(せきしょう)」、「唐崎(からさき)の夜雨(やう)」、「矢橋(やばせ)の帰帆(きはん)」、「三井(みい)の晩鐘(ばんしょう)」を指します。今ではその意図に気づかないかもしれませんが、江戸時代当時の人々はこのデザインを見たら何を描いているかピンと来るものでした。このように、デザインを見るとその当時の人々の嗜好を知ることができます。
 現在でも衣服はもちろん小物類などに、いろいろなデザインが見られます。その中には昔から愛されているデザインがたくさんあります。松坂屋コレクションを見て、みなさんが親しみを持つものも見つかるでしょう。作品が作られた当時の人々の気分になってデザインを見てください。また、自分ならどうデザインするか考えてみるのもおもしろいかもしれません。ぜひ、デザインの妙をお楽しみください。

近江八景が全体に描かれている小袖

袖の拡大図で、雪で白くなった比良山が描かれている

納戸縮緬地近江八景模様小袖

近江八景の内 比良の暮雪(拡大図)